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親の通院付き添いや見守りが増え、急な呼び出しも続くと、「仕事と介護を両立できない」「もう辞めるしかない」と感じることがあります。
しかし、退職を決める前に確認したいのが、介護を自分一人で担う前提になっていないかという点です。介護保険サービス、家族の分担、勤務先の両立支援制度を組み合わせることで、働き続けられる場合があります。
厚生労働省も、介護に直面してすぐ退職するのではなく、仕事と介護を両立するための制度を活用しながら就業を続けることを案内しています。
この記事では、親の介護と仕事の両立が難しくなったときに、退職前に確認したい制度、会社への相談、介護体制の整え方、続けるか辞めるかを考えるときのポイントを順番に整理します。
親の介護と仕事はなぜ両立が難しくなる?
介護は育児とは違い、始まる時期や必要な期間を予測しにくい特徴があります。転倒や入院をきっかけに突然介護が始まり、短期間で仕事の調整を迫られることもあります。
さらに、通院、買い物、食事、入浴、服薬管理、各種手続きなどを家族がすべて担当すると、仕事の前後や休日まで介護に使う状態になりかねません。
厚生労働省も、介護は突発的に問題が発生することがあり、介護を行う期間や方法も多様であることから、仕事との両立が難しくなる場合があるとしています。
「自分がやるしかない」が負担を大きくする
親が一人暮らしだったり、近くに住む子どもが自分だけだったりすると、介護の役割が一人に集中しやすくなります。
ただし、家族がすべての介護を直接行うことだけが選択肢ではありません。家族が担う部分と、専門職・介護サービスに任せる部分を分けることが、長期的な両立では重要です。
仕事を辞める前に確認したい3つのこと
退職を考えるほど負担が大きい場合は、まず問題を「仕事」「介護」「家族」の3つに分けて整理します。
1. 仕事の何が両立を難しくしているか
- 急な休みを取りにくい
- 残業や出張が多い
- 勤務時間と通院・サービス時間が合わない
- 上司や同僚に介護について伝えていない
- 利用できる社内制度を把握していない
2. 家族が何を介護しているか
- 通院の付き添い
- 食事や買い物
- 入浴や排泄の介助
- 服薬管理
- 夜間の見守り
- 行政や介護サービスの手続き
この中に介護サービスなどへ切り替えられるものがないかを確認します。
3. 誰にも相談せず退職を決めようとしていないか
勤務先、地域包括支援センター、ケアマネジャー、家族など、相談先によって解決できる問題が異なります。
介護そのものを何から始めればよいか分からない場合は、親の介護は何から始める?突然必要になったときの手順から確認してください。
介護と仕事の両立に利用できる主な制度
育児・介護休業法には、対象となる家族を介護する労働者が利用できる両立支援制度があります。実際の対象要件や申出方法は制度ごとに異なるため、勤務先の担当者や厚生労働省の最新案内で確認してください。
介護休業
介護休業は、対象家族の介護のために一定期間仕事を休める制度です。
ここで重要なのは、介護休業を家族が長期間つきっきりで介護するためだけの期間と考えないことです。厚生労働省は、介護休業制度を、要介護状態にある対象家族の介護体制を構築するため一定期間休業する場合に対応するものと位置付けています。
休業期間中に要介護認定やケアマネジャーへの相談、介護サービスの調整、家族間の役割分担などを進め、仕事へ戻った後も続けられる体制をつくるという使い方を考えます。
介護休暇
通院の付き添いや介護に関する手続きなど、比較的短い用事への対応では介護休暇を利用できる場合があります。介護休業とは役割が異なるため、必要な休み方に応じて使い分けます。
介護休暇と介護休業の日数・使い方・給付の違いを詳しく確認したい方は、介護休暇と介護休業の違いも参考にしてください。
短時間勤務などの措置
厚生労働省は、介護のための短時間勤務等の措置として、短時間勤務、フレックスタイム、時差出勤などの仕組みを案内しています。
勤務時間を少し調整することで、訪問介護の開始前に親の様子を確認する、通院日に勤務時間をずらすといった両立ができる場合があります。
会社独自の制度も確認する
法定制度とは別に、在宅勤務、時間単位の休暇、独自の介護支援制度などを設けている企業もあります。利用できる制度は勤務先によって異なるため、就業規則や社内制度を確認しましょう。
仕事を続けるために「介護体制」を整える
仕事側の制度だけ整えても、家族が毎日すべての介護を担当していれば負担は減りません。仕事との両立では、介護側の体制づくりも同時に進めます。
地域包括支援センターへ相談する
まだ要介護認定を受けていない、どのサービスが必要か分からない場合は、親が住んでいる地域の地域包括支援センターなどへ相談できます。
相談できる内容や利用方法は、地域包括支援センターは何を相談できる?で詳しく解説しています。
必要なら要介護認定を申請する
介護保険サービスの利用が必要な場合には、要介護・要支援認定の申請を検討します。
ケアマネジャーには仕事の事情も伝える
介護サービスを検討するときは、親の状態だけでなく、家族が働いていることや対応できない時間帯も伝えます。
担当してもらうケアマネジャーの探し方や選び方から確認したい場合は、ケアマネジャーの探し方・選び方と相談先も参考にしてください。
厚生労働省は2026年8月更新の仕事と介護の両立支援ツールとして、「ケアマネジャーに相談する際に確認しておくべきこと」のチェックリストも公開しています。
「平日の昼間は勤務している」「毎朝の訪問は難しい」「夜間対応が続くと仕事に支障が出る」といった事情も、介護体制を考える重要な情報です。
会社にはいつ・何を相談すればいい?
介護が仕事に影響し始めてから初めて伝えるより、今後休みや勤務調整が必要になりそうだと分かった段階で相談すると、選択肢を確認しやすくなります。
2025年に段階的に施行された改正育児・介護休業法では、介護離職防止のため、事業主による雇用環境整備や、介護に直面した労働者への両立支援制度等の個別周知・意向確認などが強化されています。
会社へ相談するときは、親の病名など必要以上の個人情報を細かく説明することより、仕事への影響と希望する働き方を整理して伝えることが重要です。
- 介護が必要になった家族がいること
- 今後休みや勤務調整が必要になる可能性
- 利用できる介護休業・介護休暇などを確認したいこと
- 勤務時間や働き方について相談したいこと
制度の利用条件について会社と確認がつかない場合などは、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)も育児・介護休業法に関する相談窓口として案内されています。
兄弟姉妹・家族で介護をどう分担する?
家族分担では、「誰が直接介護するか」だけを決めると、親の近くに住む人へ負担が偏りがちです。
役割を細かく分けて考えてみましょう。
- 通院に付き添う
- 買い物や日用品を手配する
- ケアマネジャーとの連絡を担当する
- 行政手続きを担当する
- 費用面を分担する
- 定期的に電話やオンラインで様子を確認する
- 主介護者が休める日をつくる
遠方に住む家族でも担える役割はあります。直接介護の時間だけで負担を比較せず、連絡・手続き・費用なども含めて話し合うことが大切です。具体的な役割や費用の決め方は、兄弟で親の介護をどう分担する?で詳しく整理しています。
「もう両立できない」と限界を感じたときに見直すこと
制度を知っていても、介護量が増えれば両立が難しくなることがあります。
次のような状態が続いている場合は、本人の介護サービスと家族側の働き方をまとめて見直すタイミングです。
- 睡眠不足が続いている
- 仕事中も介護の連絡が頻繁に入る
- 遅刻・早退・欠勤が増えている
- 介護する家族の体調が悪化している
- 親に対して強い苛立ちを感じることが増えた
- 夜間の介護で仕事に集中できない
- 介護サービスを使っても家族の負担が大きい
家族が倒れるまで在宅介護を続ける必要はありません。ケアマネジャーや地域包括支援センターへ状況の変化を伝え、サービス量や支援方法を再検討します。
在宅生活を続けられるか迷い始めた場合は、在宅介護の限界のサインと施設入居を考えるタイミングも確認してみてください。
介護保険だけで足りない場合もある
介護保険で対応できない生活支援が両立を難しくしている場合は、自費サービスを組み合わせる方法もあります。
仕事を辞めるか続けるか迷うときの判断ポイント
介護離職を避けることは重要ですが、どのような状況でも「絶対に仕事を辞めてはいけない」という意味ではありません。
退職を含めて働き方を変える必要があるケースもあります。ただし、大きな決断だからこそ、少なくとも次の点を整理してから判断しましょう。
- 介護休業など利用できる制度を確認したか
- 勤務時間や部署変更などを会社へ相談したか
- 介護保険サービスを十分に利用できているか
- 家族の役割分担を見直せないか
- 保険外サービスを含めて外部支援を検討したか
- 退職後の家計や社会保険への影響を確認したか
- 介護が終わった後の働き方も考えたか
厚生労働省も、継続的な介護には経済的負担がかかり、介護終了後の生活を考えても経済的基盤が重要であるとして、すぐに退職せず両立制度を活用するよう案内しています。
親の介護と仕事の両立でよくある疑問
介護休業を取れば自分で親を介護し続けることになる?
介護休業は、家族が介護だけに専念し続けるための制度というより、今後の介護体制を構築するための期間として活用する考え方が重要です。要介護認定、ケアマネジャーとの相談、サービス調整などを進め、復職後の体制を整えます。
まだ要介護認定を受けていなくても会社へ相談していい?
仕事への影響が見込まれるなら、早めに相談して利用可能な制度を確認する意味があります。ただし、各制度には対象家族の状態など要件があるため、実際に利用できるかは勤務先などへ確認してください。
親が介護サービスを嫌がる場合は?
本人がサービスを嫌がる理由を確認し、いきなり多くのサービスを入れるのではなく、受け入れやすい支援から検討します。家族だけで説得することが難しい場合は、地域包括支援センターやケアマネジャーなど第三者へ相談しましょう。
会社に介護のことを言いたくない場合は?
プライベートな事情をどこまで伝えるか迷うことはあります。ただ、休業や勤務調整などの制度を利用するには申出や確認が必要です。必要以上に家庭事情を詳しく説明するのではなく、制度利用に必要な情報と仕事への影響を整理して担当窓口へ相談する方法があります。
まとめ|親の介護と仕事は「自分だけで両方を頑張る」必要はない
親の介護と仕事を両立できないと感じたとき、退職だけが解決策ではありません。
まず勤務先で利用できる介護休業・介護休暇・短時間勤務等を確認し、同時に地域包括支援センターやケアマネジャーへ相談して、家族が直接担っている介護を減らせないか検討します。
仕事と介護の両立は、家族が介護を抱えたまま働き方だけを調整することではありません。介護サービス、家族分担、勤務制度を組み合わせて、働き続けられる介護体制をつくることが大切です。

飲食・WEB・デザイン・出版など、様々な業界を経験し、今は日々利用者さんと向き合う現役のケアワーカー。介護にたどり着いたのは、大好きだった祖母の自宅介護がきっかけ。
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