介護職員初任者研修の実技で、先生の動きを見た直後は分かったつもりでも、自分の番になると手順が飛んでしまう。移乗・更衣・排泄介助などが続くと、「こんなに覚えられないのは自分だけ?」と不安になる方もいるでしょう。
初任者研修では、介護の知識だけでなく、利用者の安全や自立を意識した介助を演習の中で学びます。厚生労働省の資料では、研修は130時間の講義・演習で構成され、そのうち「こころとからだのしくみと生活支援技術」に75時間が充てられています。覚える動きが多く、未経験者が一度で整理しきれないのは不自然ではありません。
この記事では、初任者研修の実技が覚えられないときに、丸暗記ではなく「なぜその動きをするのか」から手順を身につける方法を整理します。次のスクーリングまで時間がない方にも使いやすい練習法を紹介します。
初任者研修の実技が覚えられないのはなぜ?
実技が覚えにくい大きな理由は、単純な手順暗記ではないからです。介助では、利用者の状態、安全確認、声かけ、環境、身体の使い方を同時に考える必要があります。
- 手順だけでなく声かけも必要になる
- 利用者役の状態によって動き方が変わる
- ベッド・車いす・衣類など複数の物を扱う
- 安全確認をしながら自分の姿勢にも注意する
- 一つの介助の中に細かな動作が多い
そのため、最初から一連の動きを完璧に再現しようとすると混乱しやすくなります。「全部を一度に覚える」のではなく、意味のあるまとまりに分けて覚えるのがポイントです。
初任者研修で学ぶ科目や実技の全体像を先に確認したい方は、初任者研修のカリキュラム内容と実技の流れも参考にしてください。
実技で最初に覚えたい5つの軸
介助手順をそのまま暗記する前に、どの実技にも共通しやすい考え方を押さえておくと整理しやすくなります。
- 介助を始める前に本人へ説明する
- 周囲の安全と必要物品を確認する
- 本人ができる動作はできるだけ活かす
- 無理な姿勢や急な動きを避ける
- 介助後の姿勢・環境・体調を確認する
細かな手順が一部抜けても、この5つの軸が頭に入っていると「次に何を確認すべきか」を考えやすくなります。
実技は振り付けのように順番だけを覚えるより、安全・尊厳・自立支援という目的と動作を結び付けるほうが定着しやすくなります。
初任者研修の実技を覚える7つのコツ
1.一連の手順を3〜5個のブロックに分ける
たとえば移乗介助なら、「準備」「立ち上がり」「方向転換」「着座」「終了確認」のように大きく区切ります。最初から細かい動作を20個覚えようとするより、まず全体の地図を作ったほうが混乱しにくくなります。
2.手順ではなく「理由」を横に書く
ノートには動作だけでなく、その理由も一言で書きます。
- ブレーキ確認 → 車いすが動かないようにする
- 足元確認 → 立ち上がりや方向転換を安定させる
- 声かけ → 本人が次の動きを予測できるようにする
理由が分かると、順番を一時的に忘れても考えて戻りやすくなります。
3.自分の言葉で実況しながら練習する
頭の中だけで覚えようとせず、「今は安全確認」「次に本人へ説明」「ここで姿勢を整える」と短く言葉にします。言葉と動作をセットにすると、実技中に次の行動を思い出す手がかりになります。
4.苦手な1動作だけを切り出して反復する
毎回最初から最後まで通す必要はありません。方向転換だけ、衣類を通す順番だけ、ベッド上の位置調整だけというように、つまずく部分を切り出して練習します。
一連の介助を何度も通すより、苦手部分を短く反復したほうが、自分のミスに気づきやすくなります。
5.授業直後に「3行メモ」を作る
スクーリング後は、細かいノートを作り直す前に次の3点だけ残します。
- 今日いちばん重要だったこと
- 自分が間違えたところ
- 次回もう一度確認したいところ
記憶が新しいうちに残しておくと、次の授業前の復習時間を短縮できます。
6.教材の図や写真と自分の動きを対応させる
スクール指定のテキストや配布資料がある場合は、図を見ながら自分がどこに立つか、利用者の身体がどちらを向くかを確認します。文章だけで覚えにくい方は、簡単な矢印や人物の位置を書き込むと整理しやすくなります。
授業中の撮影は、利用者役や他の受講生のプライバシー、スクール規則に関わるため、許可なく行わないようにしましょう。
7.最後に「人へ説明できるか」で確認する
覚えたつもりでも、説明しようとすると曖昧な部分が見つかります。家族や同じ受講生に実演する必要はなく、「なぜ最初に環境を整えるのか」「どこが危険か」を自分で説明できれば十分です。
説明できない部分が、次に復習する場所だと考えると勉強の優先順位がはっきりします。
苦手な実技別の覚え方
移動・移乗介助が覚えられない場合
移乗では、細かな手の位置を丸暗記する前に「移動先の準備」「足元」「本人の残存能力」「介助者の姿勢」「着座後の安定」という順に考えてみましょう。
特に、自分の力だけで持ち上げようとすると動作が不安定になりやすいため、授業で教わった身体の使い方を優先して練習します。スクールによって手順や使用する福祉用具が異なる場合があるので、自己流に変えず講師の指導を基準にしてください。
更衣介助が覚えられない場合
更衣は「衣類をどう動かすか」だけでなく、本人の動かしやすい側・動かしにくい側、姿勢、露出への配慮をセットで整理します。
左右が混乱する場合は、テキストに左右を書き込むのではなく、「どちらの側に制限がある設定なのか」を毎回確認する習慣をつけると、事例が変わっても対応しやすくなります。
排泄・入浴介助が覚えられない場合
排泄や入浴は工程が多いため、「準備」「移動」「実施」「清潔保持」「終了後」の5段階に分けて覚える方法が向いています。
羞恥心への配慮や転倒予防など、技術以外の観点も重要です。速さよりも、なぜその確認が必要なのかを説明できる状態を目指しましょう。
覚えようとして逆に混乱しやすい勉強法
一生懸命勉強していても、方法によっては覚えにくくなることがあります。
- 講師の動きを一字一句・一動作そのまま暗記しようとする
- 毎回すべての実技を最初から最後まで練習する
- 間違えた場所を記録せず、回数だけ増やす
- 複数の動画や教材を見比べすぎて手順が混ざる
- 分からないまま自己流で補ってしまう
介助方法には、利用者の状態や研修実施者の指導方針によって違いが出る部分があります。試験や演習の準備では、まず受講しているスクールの教材・講師の指導を基準にしてください。
次のスクーリングまで時間がないときの復習法
時間がないときは、すべてを復習し直すより優先順位を決めます。
- 前回注意された点を3つに絞る
- それぞれ「なぜ必要か」を確認する
- 頭の中で最初から最後まで流れを再生する
- 止まった部分だけ教材で確認する
- 当日は早めに講師へ不明点を質問する
10〜15分でも、目的を決めて復習すれば「何となく全部を見る」より効率的です。
何度練習しても覚えられないときはどうする?
何度やっても同じところで止まる場合は、自分の記憶力だけの問題と考えず、つまずき方を分けてみましょう。
- 順番が混乱する → ブロック分けする
- 左右が混乱する → 利用者の状態設定から確認する
- 声かけを忘れる → 動作前に必ず一言入れるルールにする
- 緊張すると飛ぶ → 最初の3手順だけ固定する
- 身体の使い方が分からない → 講師に実演を見てもらう
特に身体介助は、文章だけでは修正しにくい部分があります。無理に一人で練習を続けるより、スクーリング中に「この姿勢で合っていますか」「ここで手順が分からなくなります」と具体的に質問したほうが早く改善しやすくなります。
研修全体について「難しくてついていけない」と感じている方は、初任者研修が難しいと感じる理由とつまずき対策もあわせて確認してください。
初任者研修の修了評価と実技の考え方
厚生労働省の資格情報では、介護職員初任者研修は130時間の講義・演習等を行い、修了評価として筆記試験を実施する枠組みが示されています。一方、実技の習得状況は演習の中で確認され、具体的な評価方法や再評価の扱いは都道府県・研修実施者の要綱や運用によって異なる場合があります。
そのため、「実技を一度間違えたら修了できない」と決めつける必要はありませんが、受講中のスクールでどのように習得度を確認するのかは事前に確認しておくと安心です。
初任者研修そのものの仕組みを整理したい方は、介護職員初任者研修とは?資格の概要と学べる内容をご覧ください。これから講座を選ぶ段階なら、初任者研修の通信講座・スクール比較も参考になります。
参考情報
まとめ|実技は丸暗記より「理由」と「流れ」で覚える
初任者研修の実技が覚えられないときは、最初から完璧な一連動作を目指す必要はありません。
- 手順を3〜5個のまとまりに分ける
- 動作の理由をセットで理解する
- 苦手な部分だけを短く反復する
- スクールの教材と講師の指導を基準にする
- 分からない部分は具体的に質問する
介助の手順は、安全・尊厳・自立支援という目的につながっています。「次は何番目の動作だっけ」と覚えるだけでなく、「今は何のための確認をしているか」と考えると、実技は整理しやすくなります。
一度で覚えられない部分があっても、つまずく場所を特定できれば対策はできます。次のスクーリングでは、全部を完璧にするより「前回より一つ確実にできることを増やす」つもりで取り組んでみてください。

飲食・WEB・デザイン・出版など、様々な業界を経験し、今は日々利用者さんと向き合う現役のケアワーカー。介護にたどり着いたのは、大好きだった祖母の自宅介護がきっかけ。
ケアチルでは、現場での視点も交えつつ、これから介護業界に携わろうとしている方、すでに業界にいて岐路に立っている方に向けて、介護業界の情報を分かりやすくお届けします。






