体位変換は、利用者の褥瘡(床ずれ)予防や安眠のために欠かせないケアのひとつ。しかし、介護者にとっては腰への負担が大きい場面でもあります。
「毎回かがんでいるうちに痛くなる」「腕力に頼ってしまい疲れ切る」など、多くのスタッフが悩みやすい業務です。
腰痛は一度悪化すると仕事に大きな影響を与えるため、“力でやる介助”から“身体の使い方で行う介助”に切り替えることが重要です。
この記事では、体位変換で腰を守るための姿勢・体重移動・てこの原理・補助具活用について詳しく解説します。
① 腰痛の原因は「重心のズレ」と「腕力中心の介助」
体位変換で腰を痛める原因のほとんどは、自分の重心がズレている状態で利用者を動かそうとしてしまうことにあります。
こんな姿勢に心当たりはありませんか?
- 前かがみ・中腰で介助している
- 足が狭く、バランスが悪いまま引っ張っている
- 腕力だけで持ち上げようとしている
- 身体をひねりながら動かしている
これらはすべて腰に大きな負担をかけるNG姿勢です。
まずは「自分の重心が利用者に近い位置にあるか」「腕だけで動かしていないか」を見直すことが重要です。
② 体重移動を使うと“軽い力”で動かせる
腕で引くのではなく、自分の体重を利用者の方向へ移動させることで、驚くほど少ない力で体位変換ができます。
体重移動のポイント:
- 足幅は肩幅より少し広めに取る
- 片足を利用者の方向へ軽く前に出す
- 腕で引くのではなく、体ごと前へ移動して“押す・滑らせる”イメージ
- 腰を曲げず、膝を軽く曲げて重心を低くする
身体全体を使うことで、力の負担が腰から太もも・お尻・体幹へ分散され、疲れにくくなります。
③ 「てこの原理」で動かすとさらに楽になる
体位変換は物理法則のてこの原理を使うと、最小限の力で効率よく動かせます。
ポイントは、
- 利用者の身体を“持ち上げる”のではなく、テコのように“傾ける・滑らせる”
- 腕を支点にせず、“自分の体重”を力点として使う
- 動かす方向に身体全体を傾ける
たとえば横向きへの体位変換では、利用者の肩・骨盤に軽く手を添え、
自分の体重を横方向に移すことでスムーズに回転させることができます。
力任せに引っ張る必要がなくなり、腰への負担は大幅に減ります。
④ 補助具や“滑りやすいシーツ”を積極的に活用する
体位変換で腰痛を防ぐためには、補助具を使うことも大きな味方になります。
使える補助具の例:
- スライディングシート(滑りやすいシーツ)
- 移動用ボード
- ポジショニングクッション
- 持ち手つき体位変換補助具
スライディングシートは特に効果が高く、摩擦が減るため“持ち上げる”必要がなくなるのが最大のメリットです。
利用者の肌への負担も少なく、介助者の腰を守るための必須アイテムといえます。
⑤ 2人介助に切り替える判断も“安全のうち”
体位変換には、利用者の体格・状態によっては一人介助では危険な場面もあります。
次のようなケースでは、ためらわず2人介助に切り替えましょう。
- 体重が重く、滑らせるだけでは動かない場合
- 筋力が弱く、転落リスクが高い場合
- 利用者が急に動きやすい場合
2人介助にすることで、利用者の安全だけでなく、介助者自身の腰の保護にもつながります。
「無理をしない」ことも専門性のひとつです。
⑥ チームで“腰痛予防の共通ルール”を作ると負担が偏らない
体位変換で腰を痛めるのは、個人の技術不足ではなく、チーム体制の問題であることも多いです。
たとえば、
- 滑りやすいシーツの使用を徹底する
- 体格差の大きい利用者は原則2人介助にする
- 腰痛を抱えているスタッフの負担を軽くする
- ベッド高さの調整を習慣化する
といったルールを整えることで、
スタッフの負担が偏らず、安全で継続できる体位変換につながります。
まとめ:体位変換は“力”ではなく“身体の使い方”で行う
体位変換で腰を痛めてしまうのは、技術がないからではなく、身体の使い方を知らないだけです。
① 重心のズレを直す
② 体重移動を使う
③ てこの原理で“滑らせる”
④ 補助具を活用する
⑤ 無理な場面は2人介助に切り替える
これらを意識することで、体位変換は驚くほど楽になります。
自分の身体を守ることは、利用者の安全にも直結します。
今日から少しずつ、“身体にやさしい介助”を身につけていきましょう。
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飲食・WEB・デザイン・出版など、様々な業界を経てきた現役のケアワーカー。介護にたどり着いたのは、大好きだった祖母の自宅介護がきっかけ。ケアチルでは、現場での視点も交えつつ、これから介護業界に携わろうとしている方、すでに業界にいて岐路に立っている方に向けて、介護業界の情報を分かりやすくお届けします。