利用者さんに怒られた時の気持ちの切り替え方は?|心を守りながら続けていくためのセルフケア

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介護の現場では、どれだけ丁寧に関わっていても、利用者さんにきつい言葉を言われたり、怒られてしまう場面があります。
「そんなつもりじゃなかったのに…」「自分が悪かったのかな…」と落ち込み、しばらく頭から離れないこともあるでしょう。
とくに新人のうちは、利用者さんの言葉を“自分への否定”として受け止めてしまいやすく、心がすり減ってしまうことも少なくありません。

ですが、利用者さんの怒りや強い言葉の背景には、認知症状・不安・体調不良・生活環境のストレスなど、さまざまな要因が隠れています。
その反応は「あなたという人間」を否定しているのではなく、“状況に対する反応”であることがほとんどです。

この記事では、「利用者さんに怒られてつらい」と感じたときに、気持ちを立て直すための考え方と、具体的なセルフケアの方法、そしてチームで支え合うためのポイントを、現場目線でまとめました。

① 怒りの背景は“病気・不安・混乱”にあることが多い

利用者さんが強い口調になったり、怒ったような態度を取るとき、そのすべてがあなた個人に向けられているわけではありません。むしろ、多くの場合は次のような背景があります。

  • 認知症による記憶の混乱や見当識障害
  • 不安や恐怖心からの防衛反応
  • 痛み・体調不良・疲労感
  • 環境の変化や生活リズムの乱れ
  • 言葉でうまく気持ちを伝えられないストレス

こうした要因が重なると、利用者さんは「怒る」という形でしか気持ちを表現できないことがあります。
つまり、表面上はあなたに向かっているように見えても、実際には“自分のつらさ”や“混乱”に対する反応であるケースが多いのです。

「自分が全部悪いのではない」「病気や不安が言葉になっている」と理解できるだけでも、心のダメージは少し軽くなります。

② 「人格を否定されたわけではない」と捉え直す

きつい言葉を受けると、つい「自分は向いていないのかも」「嫌われてしまった」と考えてしまいがちです。
しかし、そこで大切なのは、利用者さんの言葉を“そのまま100%自分への評価として受け取らないこと”です。

たとえば、

  • 「遅い!」と言われた → 不安や焦りからくる言葉かもしれない
  • 「あんたなんか嫌いだ!」と言われた → その瞬間の混乱やストレスの表現かもしれない

このように、言葉の裏にある感情を想像してみると、少し距離を持って受け止めやすくなります。
あなたの人格や価値が否定されたわけではなく、その場の状況と本人のつらさがぶつかった結果としての反応である、と捉え直す視点が大切です。

③ 一旦距離を取り、気持ちを整える時間をつくる

頭では分かっていても、心が傷つくことはあります。
そんなときは、無理に「平気なふり」をするのではなく、少し距離を取って自分の心を守る時間をつくりましょう。

具体的なリセット方法としては次のようなものがあります。

  • その場を離れて深呼吸をする
  • 水を一杯飲んで気持ちを切り替える
  • ナースステーションや休憩スペースに一度戻る
  • 「少し交代してもらえますか」と同僚に頼む

短い時間でも、「安全な場所」で呼吸を整え、気持ちを落ち着けることで、心のダメージは軽減されます。
怒られた直後は、どうしても視野が狭くなりがちなので、意識的に一度クールダウンする習慣をつけるとよいでしょう。

④ 同僚と交代したり、話を聞いてもらったりする

一人で抱え込むほど、怒られた記憶は強く残ってしまいます。
そんなときは、同僚や先輩に「さっきこういうことがあって…」と話を聞いてもらうことも大切なセルフケアです。

同僚に相談すると、

  • 「その方、午前中から少し不安定だったよ」と情報が共有される
  • 「自分も前に同じようなことがあったよ」と共感がもらえる
  • 「こう声をかけると落ち着かれやすいかも」と具体的なアドバイスが得られる

など、一人で悩んでいたときには見えなかった視点が得られます。
「自分だけじゃない」「みんなで支えている」という実感は、気持ちの立て直しに大きく役立ちます。

⑤ 後でチームに共有し、対応方法を話し合う

利用者さんからの強い反応があった出来事は、チームとしても共有しておきたい大事な情報です。

共有のポイントとしては、

  • どんな場面で怒りが強く出たのか
  • その前後の体調や様子
  • どんな言葉や接し方に反応したのか
  • その後、どんな対応をしたら少し落ち着いたか

といったことを簡潔に整理して伝えると、次回以降のケアがしやすくなります。
また、カンファレンスや申し送りの場で「こういうとき、どう対応するといいだろう?」と話し合うことで、あなた一人の負担ではなく、チーム全体の課題として扱えるようになります。

⑥ 自分を責めるより、「次に活かせる一歩」を考える

落ち着いてから振り返るときは、自分を責めるためではなく、次に活かすための振り返りにしましょう。

たとえば、

  • 声かけのタイミングや言い回しはどうだったか
  • もっと安心感を伝えられる方法はなかったか
  • その方に合う関わり方のヒントはなかったか

などを、短くメモしておくのも有効です。
「うまくいかなかった経験」は、実は今後のケアを深めるための貴重な教材になります。

完璧な対応ができる人など存在しません。
失敗やつまずきを重ねながら、少しずつその人に合った関わり方を見つけていくことこそが、介護の専門性でもあります。

まとめ:怒られた経験を、“自分を責める材料”ではなく“成長のきっかけ”に

利用者さんに怒られたとき、心が揺れるのは当然のことです。
しかし、その反応は認知症状や不安・混乱から生じたものであり、あなたという人間そのものを否定しているわけではありません。

大事なのは、

・一旦距離を取り、深呼吸して気持ちを整える
・必要に応じて同僚と交代し、一人で抱え込まない
・後でチームに共有し、対応方法を一緒に考える

という流れを、自分の中の“安全な型”として持っておくことです。

つらかった経験も、チームで共有し、振り返り、次のケアに活かしていけば、必ずあなたの大きな財産になります。
「怒られた=向いていない」ではなく、「難しい場面を一つ経験した」と捉え直しながら、自分の心を守るケアも大切にしていきましょう。

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