介護の現場では、人手不足や急な欠勤対応などから、
「今日も残業お願いできる?」と声をかけられる場面が少なくありません。
最初は「少しなら大丈夫」「断りにくいし…」と引き受けていたものの、
気づけば頻繁に残業を頼まれる存在になってしまい、
「本当はきついのに断れない」「自分ばかり負担が大きい」と感じている人も多いのではないでしょうか。
残業を断れない状態が続くと、疲労の蓄積だけでなく、
不公平感やモチベーションの低下につながり、結果的に仕事を続けること自体がつらくなってしまいます。
この記事では、残業を頼まれやすくなる理由を整理しつつ、
人間関係を壊さずに、無理なく断るための伝え方と、
「断ること=悪いことではない」という考え方について、現場目線で詳しく解説します。
① 断れない状態が続くと「頼めば引き受けてくれる人」になりやすい
残業をよく頼まれる背景には、能力や評価だけでなく、
「頼みやすさ」が影響していることがあります。
よくあるパターン:
- 最初はたまたま都合がついて引き受けた
- 断らずに対応し続けた
- 「この人なら大丈夫」という前提ができてしまった
こうして無意識のうちに、
「この人に頼めば残業してくれる」という認識が固定化されていきます。
これは決してあなたが悪いわけではありませんが、
放置すると負担が偏り、疲れや不満が溜まりやすくなります。
② 残業を断ることは「わがまま」でも「無責任」でもない
残業を断ることに対して、
- 周りに迷惑をかけるのでは
- 評価が下がるのでは
- 協調性がないと思われるのでは
と不安を感じる人は少なくありません。
しかし、残業は本来「お願い」であり、義務ではありません。
自分の体調や生活を守るために断ることは、プロとして当然の判断です。
むしろ、無理を重ねて集中力が落ちたり、ミスが増えたりする方が、
現場にとってはリスクになります。
「断る=迷惑」ではなく、「無理をしない=安全を守る行動」
という視点を持つことが大切です。
③ 断るときは「理由+代替案」をセットで伝えると角が立ちにくい
残業を断る際、ただ「無理です」とだけ伝えると、
相手もどう受け取っていいか分からず、気まずくなりがちです。
そこで有効なのが、
● 正直な理由
● 可能であれば代替案
をセットで伝える方法です。
伝え方の例:
- 「今日は体調的に厳しくて難しいです。別の日なら調整できます」
- 「家庭の事情があって今日は残れません。次回は早めに分かれば対応できるかもしれません」
- 「連勤が続いているので今日はお断りさせてください」
このように具体的に伝えることで、
一方的な拒否ではなく、状況説明として受け取ってもらいやすくなります。
④ あいまいな返事は、かえって「頼みやすさ」を強めてしまう
断るのが苦手な人ほど、
- 「ちょっと考えます」
- 「できたらでいいですか?」
- 「今回はたまたま…」
といった、あいまいな返事をしがちです。
しかし、こうした返し方は、
「本当はできるけど気が進まないだけ」と受け取られてしまい、
結果的に次も頼まれやすくなります。
断るときは、短くても構わないので、
はっきりと「今日はできません」と伝えることが大切です。
⑤ 頻繁に続く場合は、一度「状況そのもの」を相談する
単発の残業依頼ではなく、
- 毎回同じ人に残業が集中している
- 慢性的に残業を頼まれている
と感じる場合は、
個別の断り方だけでなく、状況全体を上長に相談することも重要です。
相談時のポイント:
- 感情ではなく事実を伝える
- 体調や集中力への影響を説明する
- 「安全に働き続けたい」という目的を共有する
例:
「最近残業が続いていて、体調面が心配です。
今後のシフトや分担について一度相談させてください」
こうした伝え方であれば、
責める印象を与えず、前向きな話し合いにつなげやすくなります。
⑥ 自分の限界を知り、ときには断る選択をすることもプロの判断
介護の仕事は、人の生活と安全を支える仕事です。
だからこそ、
自分自身のコンディションを守ることは、仕事の一部
と言えます。
「今日は無理」「これ以上は集中できない」
そう感じたときに断ることは、逃げでも甘えでもありません。
むしろ、無理を重ねて限界を超えてしまう方が、
長く働き続けるうえでは大きなリスクになります。
まとめ:残業を断ることは、自分と現場を守るための大切な行動
残業を頼まれ続ける状況は、誰にとってもつらいものです。
しかし、断れずに我慢を重ねる必要はありません。
① 断れない状態が続くと「頼まれやすい人」になりやすい
② 残業を断ることは無責任ではない
③ 理由+代替案をセットで伝える
④ あいまいな返事は控える
⑤ 続く場合は上長に相談する
⑥ 自分の限界を理解し、断る選択も大切にする
自分を守る行動は、結果的に利用者さんの安全や、
チーム全体の安定にもつながります。
「無理なく続けられる働き方」を意識しながら、
必要なときにはきちんと声を上げていきましょう。
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飲食・WEB・デザイン・出版など、様々な業界を経てきた現役のケアワーカー。介護にたどり着いたのは、大好きだった祖母の自宅介護がきっかけ。ケアチルでは、現場での視点も交えつつ、これから介護業界に携わろうとしている方、すでに業界にいて岐路に立っている方に向けて、介護業界の情報を分かりやすくお届けします。




