介護現場、とくに訪問介護では、利用者さんの生活空間に深く関わる分、
鍵や金銭に関するトラブルが起こりやすい側面があります。
「善意で対応したつもりが誤解された」
「あとから『なくなった』と言われてしまった」
こうしたケースは、決して珍しい話ではありません。
鍵やお金のトラブルは、一度起きてしまうと、
信頼関係だけでなく、自分自身の立場や仕事継続にまで影響する可能性があります。
この記事では、鍵・金銭トラブルに巻き込まれないために、
現場で必ず意識しておきたい基本姿勢と具体的な対策を、
介護職の視点で詳しく解説します。
① 鍵や金銭は「触れない」が基本スタンス
まず大前提として、
利用者さんの鍵や金銭には、むやみに触れない
という意識が最も重要です。
善意であっても、
- 財布を預かる
- 現金を動かす
- 鍵を管理する
といった行為は、トラブルの種になりやすい行動です。
特に、
- 認知症がある方
- 記憶が曖昧な方
の場合、あとから事実と違う認識が生まれてしまうこともあります。
「触らない」「預からない」「管理しない」を基本にしましょう。
② やむを得ず触れる場合は「必ず確認・同意」を取る
業務上どうしても、
- 鍵を預かる必要がある
- 金銭を扱う場面がある
というケースもあります。
その場合は、
必ず本人や家族に確認し、同意を得たうえで対応する
ことが鉄則です。
確認時のポイント:
- 何のために必要か
- 誰が、いつ、どこで扱うのか
- 返却方法はどうするか
口頭だけで済ませず、
事業所のルールに沿った形で進めることが重要です。
③ 金銭管理の依頼は「個人判断」で引き受けない
訪問介護では、
- 買い物代行
- 立て替え
- 現金預かり
など、金銭が関わる支援を求められることがあります。
このとき注意したいのは、
「頼まれたから」「断りづらいから」と個人判断で引き受けない
ことです。
金銭管理は、
- 事業所として対応可能か
- ルールや手順が明確か
- 記録方法が決まっているか
を必ず確認したうえで行う必要があります。
曖昧な状態での対応は、
後々「言った・言わない」のトラブルにつながります。
④ 記録は「自分を守るための証拠」になる
鍵や金銭が関わる場面では、
必ず記録を残すことが重要です。
記録に残したい内容:
- いつ
- 何を
- 誰の確認を得て
- どう対応したか
感情や推測ではなく、
事実ベースで記録することがポイントです。
記録は、
- トラブル防止
- 職員間の共有
- 自分を守る証拠
として、大きな役割を果たします。
⑤ 違和感を覚えたら「その場で判断しない」
鍵や金銭に関して、
- 少し不安を感じた
- 説明が曖昧だと感じた
- いつもと違う依頼をされた
といった場合は、
その場で無理に判断せず、一度立ち止まる
ことが大切です。
「確認しますね」「一度事業所に持ち帰ります」と伝え、
すぐに上長や責任者へ相談しましょう。
早めの相談が、
大きなトラブルを防ぐ一番の近道です。
⑥ 鍵・金銭トラブルは「信頼していた相手」ほど起きやすい
注意したいのは、
鍵や金銭のトラブルは、
信頼関係ができてきた頃に起きやすい
という点です。
「この人なら大丈夫」
「今まで問題なかったから」
という気の緩みが、
境界線を曖昧にしてしまうことがあります。
どれだけ関係が良くても、
ルールはルールとして守ることが、
結果的に信頼を守ることにつながります。
⑦ トラブルを防ぐ意識は「自分を守るプロ意識」
鍵や金銭に慎重になることを、
- 冷たい
- 融通が利かない
と感じる必要はありません。
それは、
自分と利用者さん、双方を守るためのプロ意識
です。
万が一のトラブルは、
誰かの善意だけでは解決できません。
だからこそ、
「触れない・預からない・一人で判断しない」という姿勢を、
日頃から徹底しておくことが重要です。
まとめ:鍵・金銭は「個人対応しない」が最大の防御
鍵や金銭トラブルを防ぐためには、
日々の意識と行動が何より大切です。
① むやみに触れない・預からない
② 必要な場合は必ず確認と同意を取る
③ 金銭管理は事業所ルールに従う
④ 記録を必ず残す
⑤ 違和感があれば即相談
⑥ 信頼関係があっても線引きを守る
⑦ 自分を守る行動はプロとして正しい
一人で抱え込まず、
事業所全体でルールを共有しながら対応することが、
安心して介護を続けるための土台になります。
「慎重すぎるくらいでちょうどいい」
その意識を大切にしていきましょう。
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飲食・WEB・デザイン・出版など、様々な業界を経てきた現役のケアワーカー。介護にたどり着いたのは、大好きだった祖母の自宅介護がきっかけ。ケアチルでは、現場での視点も交えつつ、これから介護業界に携わろうとしている方、すでに業界にいて岐路に立っている方に向けて、介護業界の情報を分かりやすくお届けします。




