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介護職として働くなかで、難しく感じやすい業務の一つが「申し送り」です。「何をどこまで伝えればいい?」「話が長くなる」「日勤と夜勤で情報がうまくつながらない」と悩むこともあるでしょう。
申し送りで大切なのは、勤務中の出来事を全部話すことではありません。次の勤務者が安全にケアを続けるために必要な情報を、事実を中心に、優先順位をつけて引き継ぐことです。
この記事では、何を伝えるか、短くまとめる順番、日勤・夜勤を含む場面別の例文、受け手側のメモ方法、記録との使い分け、チーム全体で情報共有を整えるポイントまでまとめます。
介護職の申し送りは「次の人が安全に動ける状態」をつくるためにある
介護現場の申し送りは、前の勤務者から次の勤務者へ、利用者の状態変化や対応状況、これから注意してほしいことを引き継ぐために行います。
良い申し送りの基準は「たくさん話せたか」ではなく、聞いた人が次に何を確認し、どう動けばよいか分かるかです。
「今日は元気がありませんでした」だけではなく、「昼食は普段8割ほどだが今日は3割。本人から気分が悪いとの訴えがあり、看護職へ報告済み」のように、観察した事実と対応を伝えると状況が具体的になります。
介護の申し送りでは何を伝える?優先したい情報
施設形態や利用者の状態によって内容は変わりますが、優先度が高いのは「変化」「安全」「継続対応」に関わる情報です。
- 発熱、痛み、血圧など体調・バイタルの変化
- 食事量、水分量、むせ、食欲などの変化
- 排泄回数、便性状、排尿状況など普段との違い
- 転倒・転落、ヒヤリハット、皮膚トラブルなど安全上の情報
- 不穏、拒否、眠気、落ち着かなさなど行動・様子の変化
- 看護職やリーダー等へ報告し、すでに行った対応
- 家族や他職種から受けた重要な連絡
- 次の勤務帯で観察・対応・確認してほしいこと
「いつもと違う」を具体化する
「なんとなく変」で終わらせず、「普段は自分で食堂まで歩くが、今日は立ち上がり時にふらつきが2回あった」のように、普段との違いを観察できた事実で伝えます。
事実と推測を分ける
「眠そうだから体調不良だと思う」ではなく、「昼食後から目を閉じている時間が長い。声かけには返答あり。体温は○℃。看護職へ報告済み」のように分けると、次の勤務者が判断しやすくなります。
申し送りが短く伝わる話し方の順番
毎回同じ型で整理すると、情報量が多い日でも話しやすくなります。
- 最初に「誰に何があったか」を伝える
- いつ・どこで・どの程度だったかを具体化する
- すでに行った対応と、その後の状態を伝える
- 次の勤務者に確認・継続してほしいことを伝える
たとえば「Aさん、15時ごろ立ち上がった際にふらつきがありました。転倒はしていません。椅子に座ってもらい、リーダーへ報告済みです。その後は歩行時に付き添っています。夜間も立ち上がり時のふらつきに注意してください」という流れです。
医療・介護領域では、状況・背景・評価・提案の順に整理するSBARという考え方もあります。ただし介護職が医学的診断をするという意味ではありません。所属先のルールや職種間の役割に沿い、観察した事実と必要な報告を中心に整理しましょう。
日勤から夜勤・夜勤から日勤では何を申し送る?
勤務帯が変わると、次に必要となる情報も変わります。勤務中の出来事を並べるのではなく、次の勤務帯で起こり得ること・確認してほしいことまでつなげるのがポイントです。
日勤から夜勤へ
夕方までの体調変化、食事・水分、排泄、転倒リスク、夕方以降の不穏や眠気、服薬や看護職への報告状況など、夜間の観察につながる情報を優先します。
例:「Aさん、昼食後から水分が少なめで、夕食は5割でした。17時に看護職へ報告済みです。今のところ発熱はありません。夜間も水分量と体調変化の確認をお願いします。」
夜勤から日勤へ
睡眠状況、夜間の離床、排泄、転倒リスク、体調変化、早朝の様子、夜間に行った対応と未完了の確認事項を中心にします。
例:「Bさん、2時と4時に離床があり、4時はトイレ誘導しています。転倒はありません。5時以降は休まれています。昨夜より立ち上がり時のふらつきが見られたため、日中も移動時の様子を確認してください。」
日勤と夜勤で同じ情報を何度も伝えるより、「前の勤務帯から何が変わったか」「次に何を見てほしいか」を明確にすると情報の抜けや重複を減らせます。
介護職の申し送り例文|場面別に伝え方を確認
体調変化があった場合
例:「Aさん、14時に37.8℃の発熱がありました。昼食は5割、水分は普段より少なめです。看護職へ報告し、居室で休んでいただいています。16時の再検では37.5℃でした。次の勤務でも体温と様子の確認をお願いします。」
食事量が少なかった場合
例:「Bさん、夕食は主食2割、副食3割でした。本人から食欲がないとの話がありました。水分は○ml程度です。次の勤務でも体調変化がないか確認をお願いします。」
排泄に変化があった場合
例:「Cさん、15時に軟便が1回ありました。腹痛の訴えはありません。その後の排便はありません。リーダーへ共有済みです。再度排便があった場合は状態確認をお願いします。」
転倒につながりそうな場面があった場合
例:「Dさん、17時ごろベッドから一人で立ち上がろうとした際にふらつきがあり、職員が支えました。転倒や外傷はありません。リーダーへ報告済みです。移動時は特に注意してください。」
口頭・介護記録・チェック表はどう使い分ける?
申し送りと介護記録は役割が完全に同じではありません。口頭で伝えたから記録しなくてよい、記録したから重要事項を口頭共有しなくてよい、と一律には考えず、事業所のルールに沿って使い分けます。
- 口頭:次の勤務者がすぐ知る必要がある変化や注意点
- 介護記録:経過や実施したケアなど、後から確認できる形で残す情報
- 連絡ノート・チェック表:職場で定めた確認事項や継続課題の共有
同じ内容を複数の場所へ無目的に重複させると、どれが最新情報か分かりにくくなることがあります。「何を・どこへ・誰が記録するか」を職場内で統一することが重要です。
申し送りでよくある失敗と避けたい伝え方
最初から時系列ですべて話す
勤務中の出来事を最初から全部説明すると重要情報が埋もれます。まず「誰にどんな変化があったか」を伝え、必要な経緯を補足します。
「少し」「たぶん」「いつもと違う」で終える
観察できた情報があるなら、食事量・回数・時刻・本人の発言などを具体化します。
自分の評価だけを伝える
「機嫌が悪い」「わがまま」といった評価ではなく、実際の言葉や行動を伝えます。
対応したことを伝え忘れる
「誰に報告したか」「何をしたか」「その後どうなったか」まで伝えると、次の職員が対応済みか判断できます。
申し送りを受ける側はメモを「変化・対応・次にすること」で整理する
情報が多いときは全文を書き取ろうとせず、職場のルールに沿った方法で、次の3項目を軸にメモすると整理しやすくなります。
- 変化:何が普段と違ったか
- 対応:誰へ報告し、何をしたか
- 次:自分の勤務で何を確認・継続するか
たとえば「Aさん/夕食3割・気分不良/看護報告済/夜間の体温・水分確認」のように、自分が次に動ける情報へ絞ります。数値・時刻・対応内容が曖昧ならその場で確認し、重要な指示は復唱します。
個人情報を含むメモの扱いは、持ち出しや私物端末への保存を避けるなど、必ず所属先のルールに従ってください。
申し送りがうまくいかないときはチームの情報共有ルールも確認する
個人が話し方を工夫しても、日勤と夜勤で共有項目が違う、記録場所が統一されていない、申し送り時間が極端に短いなど、仕組みそのものに原因がある場合があります。
その場合は個人の努力だけで解決しようとせず、リーダーやチームで次の点を確認します。
- 必ず口頭共有する項目を決める
- 記録する場所と担当を統一する
- 重要度の高い情報を先に伝える
- 日勤・夜勤それぞれが必要とする情報をすり合わせる
- 申し送り後に不明点を確認できる流れをつくる
申し送りの問題を「話す人の能力」だけにしないことも大切です。同じ抜けや重複が繰り返されるなら、個人ではなく共有方法そのものを見直す余地があります。
まとめ|介護職の申し送りは「変化・対応・次にしてほしいこと」を軸にする
介護職の申し送りでは、勤務中の出来事をすべて話す必要はありません。「何が変わったか」「すでに何をしたか」「次の勤務者に何を確認・継続してほしいか」を軸にすると、短くても伝わる申し送りに近づきます。
日勤から夜勤、夜勤から日勤への引き継ぎでは、前の勤務帯の出来事だけでなく、次の勤務帯で注意する点までつなげましょう。また、情報量が多いときは、口頭・記録・チェック表の役割を職場内で整理することも重要です。
介護記録そのものが後回しになりやすい場合は「介護記録が後回しになる問題を防ぐ考え方」もあわせて確認してください。
未経験・新人期の仕事全体に不安がある方は「未経験・ブランクが不安な介護職の方へ」も参考になります。

飲食・WEB・デザイン・出版など、様々な業界を経験し、今は日々利用者さんと向き合う現役のケアワーカー。介護にたどり着いたのは、大好きだった祖母の自宅介護がきっかけ。
ケアチルでは、現場での視点も交えつつ、これから介護業界に携わろうとしている方、すでに業界にいて岐路に立っている方に向けて、介護業界の情報を分かりやすくお届けします。





