重度訪問介護の現場で働くための新しい資格研修として注目されている「重度訪問介護従業者研修統合課程」。
この研修では、介護の基本から重度障がい者への専門支援まで、実践的なスキルを体系的に学べます。
この記事では、統合課程のカリキュラム構成・実技内容・学べるスキル・実習の流れについて詳しく紹介します。
統合課程の目的と特徴
重度訪問介護従業者研修統合課程(以下「統合課程」)は、介護職員初任者研修と重度訪問介護従業者養成研修を一体化したカリキュラムです。
未経験者でも短期間で介護の基礎と重度障がい者支援の両方を学べるように設計されています。
従来の研修では、「初任者研修を終えてから重度訪問介護研修を受ける」という二段階の流れが必要でした。
統合課程ではこれを一本化することで、学習の重複を省き、実践的な流れでスキルを習得できるのが最大の特徴です。
カリキュラムの全体構成
統合課程のカリキュラムは、主に以下の3ステップで構成されています。
- 講義(知識編):介護や障がい支援の理論を学ぶ
- 演習(実技編):介護技術を実際に練習する
- 実習(応用編):現場さながらのシミュレーションを行う
総学習時間はおおむね130〜150時間程度で、初任者研修に比べて重度障がい者支援の比重が高い構成となっています。
講義(知識編)で学ぶこと
まず、介護・福祉に関する基礎理論や制度を理解するための「講義パート」から始まります。
ここでは、介護職としての考え方や倫理観を身につけることが目的です。
主な講義内容
- 介護の基本理念と職業倫理
- 障がい福祉制度と重度訪問介護の位置づけ
- 高齢者・障がい者の心理と行動特性
- コミュニケーション技術と意思疎通支援
- 介護記録と報告書作成の基礎
- 感染症・リスクマネジメント
この段階で、制度的な背景や障がいの理解を深めることで、実技演習に入る前の「知識の土台」が作られます。
演習(実技編)で学ぶ介護技術
実技演習では、介助の基本動作から重度障がい者の支援技術まで、実際の現場を想定したトレーニングを行います。
特に「安全性」「尊厳」「自立支援」の3つを柱として、動作一つひとつを丁寧に学びます。
主な演習項目
| カテゴリ | 内容 |
|---|---|
| 身体介助 | 起床・整容・排泄・入浴・食事など、基本的な介助技術 |
| 移動支援 | 車椅子操作・移乗・体位変換・ベッド上介助 |
| 医療的ケア基礎 | 吸引・経管栄養の理論とデモンストレーション |
| 重度訪問介護特有の支援 | 長時間介助・見守り・夜間支援・外出介助など |
| コミュニケーション支援 | 意思伝達装置・ジェスチャー・表情からの理解 |
指導者が一人ひとりの動作を確認しながら指導を行い、安全で効率的な介助動作を身につけます。
受講生は実際の介護現場を想定したロールプレイを通じて、現場感覚を磨いていきます。
実習(応用編)で体験する「現場のリアル」
統合課程の後半では、現場に近い環境で実習を行います。
これは単なる“練習”ではなく、実際の支援を想定した総合トレーニングです。
実習内容の一例
- 利用者役と介助者役に分かれた実践演習
- 在宅介護のシミュレーション(寝室・トイレ・浴室)
- 緊急時対応訓練(呼吸停止・転倒・誤嚥など)
- 吸引・経管栄養の流れの確認(講師の立ち会いのもと)
この実習を通じて、受講者は「状況判断力」「リスク管理」「チーム連携」の重要性を体感します。
単に技術を覚えるのではなく、「なぜこの支援が必要なのか」を理解する力を養うことが目的です。
カリキュラムの到達目標
統合課程では、受講後に次のようなスキルを身につけることを目指します。
- 安全で根拠のある介助技術を実践できる
- 利用者の心身の状態に応じた支援を考えられる
- 医療的ケアに関する基本知識を持つ
- チームで情報共有し、連携して支援できる
- 記録・報告・相談の重要性を理解して行動できる
これらは、実際の現場で求められる“即戦力”の要素そのものです。
特に重度訪問介護では、一人で利用者の命を預かる責任があるため、正確な判断と行動が欠かせません。
他の研修との違い
初任者研修や重度訪問介護従業者養成研修と比較すると、統合課程には次のような特徴があります。
| 項目 | 初任者研修 | 重度訪問介護研修 | 統合課程 |
|---|---|---|---|
| 学習範囲 | 介護の基礎 | 重度障がい者支援 | 基礎+専門を一括学習 |
| 修了までの期間 | 約1〜2か月 | 約5日間 | 約1〜1.5か月 |
| 費用の目安 | 7〜10万円 | 2〜5万円 | 8〜12万円(両方込み) |
| 取得資格 | 初任者研修修了 | 重度訪問介護従業者修了 | 両方の修了認定 |
統合課程は「効率的に学べるだけでなく、より実践的で現場に即した内容」になっています。
これが、今後の介護教育の主流となる理由です。
受講者の声
「実習では、利用者役を体験することで、介助を受ける側の気持ちがわかりました。」
「現場で起きる“想定外”の対応を練習できたのが良かったです。」
「講師が現場出身者だったので、リアルな話が多くて理解しやすかった。」
このように、統合課程の魅力は「知識+体験」の両立にあります。
まとめ:統合課程は“現場対応力”を育てる実践型研修
重度訪問介護従業者研修統合課程は、介護職としての基本を押さえつつ、
重度障がい者支援に必要な専門スキルを一気に学べる実践型プログラムです。
カリキュラム全体を通じて、技術・判断力・倫理観・チーム意識が育まれます。
これにより、修了後は現場で即戦力として活躍できる基礎がしっかりと身につきます。
「現場で通用する介護力」を最短で身につけたい方は、ぜひ統合課程の受講を検討してみてください。
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飲食・WEB・デザイン・出版など、様々な業界を経てきた現役のケアワーカー。介護にたどり着いたのは、大好きだった祖母の自宅介護がきっかけ。ケアチルでは、現場での視点も交えつつ、これから介護業界に携わろうとしている方、すでに業界にいて岐路に立っている方に向けて、介護業界の情報を分かりやすくお届けします。
