重度訪問介護の医療的ケアと連携体制|吸引・経管栄養・看護師との協働の実際

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重度訪問介護では、利用者の多くが医療的ケアを必要としています。
人工呼吸器や吸引、経管栄養など、命に関わるサポートを行う場面も少なくありません。
この記事では、重度訪問介護における医療的ケアの内容と安全管理、そして看護師・医療機関との連携体制について詳しく解説します。

医療的ケアが必要な利用者とは

重度訪問介護を利用する方の中には、以下のような疾患や障がいを持つ方が多くいます。

  • ALS(筋萎縮性側索硬化症)
  • 筋ジストロフィー・脊髄損傷
  • 脳性まひ・高次脳機能障がい
  • 人工呼吸器・気管切開による呼吸管理
  • 経管栄養・導尿・吸引などを必要とする方

これらの利用者は、医療的ケアを継続しながら生活することが前提であり、
その支援を自宅で安全に行うために、重度訪問介護員と医療職の連携が不可欠です。

重度訪問介護における医療的ケアの範囲

重度訪問介護員が行う医療的ケアには、法律で定められた範囲があります。
主に「喀痰吸引」と「経管栄養」の2つが中心です。

医療的ケアの種類 内容 実施可能者
喀痰吸引 気道にたまった痰を吸引して呼吸を確保する 研修修了者(第1号・第2号・第3号行為)
経管栄養 胃ろう・経鼻チューブを通して栄養を注入 研修修了者(第1号・第2号行為)
体位変換・褥瘡予防 褥瘡(床ずれ)を防ぐための体位調整 介護職員(一般的介護業務)
服薬介助 医師・看護師の指示に基づく服薬サポート 介護職員(本人の同意・計画書に基づく)

介護職員が医療的ケアを行う場合は、「喀痰吸引等研修」を修了し、
自治体への登録を済ませたうえで実施する必要があります。

喀痰吸引等研修とは?

喀痰吸引や経管栄養などの医療的ケアを介護職が行うための資格が、「喀痰吸引等研修」です。
この研修は厚生労働省の定めにより、次の3区分に分かれています。

  • 第1号研修: 施設・事業所単位で実施する吸引・経管栄養
  • 第2号研修: 利用者ごとに認められた特定行為
  • 第3号研修: 在宅(訪問系)での個別的な医療的ケア

重度訪問介護では第3号研修修了者が必要となるケースが多く、
訪問現場での吸引・経管栄養を安全に行うために、専門知識と実技が求められます。

医療的ケア実施の安全管理

医療的ケアは、利用者の命に直結する行為であり、細心の注意が必要です。
現場では次のような安全管理体制が求められます。

① 実施前の確認

  • 医師の指示書・看護計画書の内容確認
  • 吸引器・経管栄養機器の動作確認
  • 利用者の体調・表情・バイタルチェック

② 実施中の留意点

  • 清潔操作(手指消毒・器具洗浄)を徹底
  • 無理な体位変更を避け、呼吸状態を常に観察
  • 異常があれば即座に中止し、看護師・家族へ連絡

③ 実施後の記録・報告

  • 実施時間・回数・内容を介護記録に残す
  • 体調変化や異常の有無をチーム全体で共有
  • 定期的に看護師が確認・評価を行う

医療的ケアは「できる」こと以上に、「安全に継続できる」ことが重要です。

看護師・医療機関との連携体制

重度訪問介護の現場では、看護師や主治医との連携が欠かせません。
特に医療的ケアを伴う利用者の場合、多職種チームでの情報共有が安全な在宅生活を支えます。

主な連携先と役割

連携先 主な役割
主治医 医療方針の決定・指示書発行・緊急対応の判断
訪問看護師 医療的ケアの管理・介護職への指導・状態観察
相談支援専門員 サービス計画書作成・利用調整・家族支援
重度訪問介護事業所 スタッフ配置・記録管理・連絡体制の整備

これらの連携が機能して初めて、在宅医療と介護のバランスが保たれます。

チームケアを支えるコミュニケーション

現場では、医療職と介護職の情報共有のズレがトラブルの原因になることがあります。
そのため、次のような連携手法が推奨されています。

  • 日報・記録アプリを活用し、リアルタイムで情報共有
  • 定期カンファレンスで課題・改善点を話し合う
  • 緊急連絡時のルール(誰に・いつ・どの順番で)を明確化
  • 看護師による定期巡回・助言を実施

「連携がスムーズな事業所ほど離職率が低い」と言われるように、
チーム内の信頼関係が、働きやすさと支援の質を大きく左右します。

事業所で求められる体制整備

重度訪問介護事業所が医療的ケアを安全に提供するためには、以下のような体制が求められます。

  • 喀痰吸引等研修修了者の配置
  • 医師・看護師との連絡体制を整備
  • 緊急時マニュアル・医療連携マップの作成
  • 医療的ケア実施の記録・報告ルールの統一
  • 定期的な実地研修・シミュレーション訓練の実施

これらを整備することで、職員の不安軽減と利用者の安全確保の両立が可能になります。

家族との連携と安心づくり

医療的ケアを伴う在宅支援では、家族の不安も大きいものです。
そのため、介護職員は家族との信頼関係の構築にも力を入れます。

たとえば、

  • 毎日の体調報告を丁寧に伝える
  • 吸引や栄養注入の様子を見てもらい、安心感を与える
  • 不安や疑問があれば、看護師と連携して即時対応

こうした積み重ねが、「家族にとっての安心の存在」につながります。

まとめ:医療的ケアは“命をつなぐ支援”

重度訪問介護における医療的ケアは、利用者の命を守る最前線の支援です。
介護職・看護職・医師・家族が一体となって連携することで、
24時間安心して生活できる在宅支援が実現します。

一人の介護職員の行動が、利用者の安全と生活の質を左右します。
正確な知識と確かなチーム連携で、“命をつなぐ支援”を届けましょう。

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