
介護職を始めるうえで最初に受ける資格として人気の介護職員初任者研修。
「どんなことを学ぶの?」「実技もあるの?」と気になる方も多いでしょう。
初任者研修は、介護の基礎をしっかり身につけられるよう合計130時間のカリキュラムで構成されています。
この記事では、初任者研修の科目内容・実技演習・学習の流れをわかりやすく解説します。
初任者研修の目的とカリキュラムの全体像
初任者研修は、厚生労働省が定めた介護人材養成制度の入門資格です。
以前の「ホームヘルパー2級」に相当し、介護職として働くための基礎的知識・技術・考え方を学びます。
目的は単なる介助技術の習得ではなく、「利用者の尊厳を守り、自立支援を意識した介護ができる人材」を育成することにあります。
カリキュラムは130時間の学習で構成されており、通信学習+通学(スクーリング)によって進められます。
区分 | 内容 | 時間 |
---|---|---|
職務の理解 | 介護職の役割・職業倫理・チームケアの理解 | 6時間 |
介護の基本 | 介護の理念・人権・尊厳・自立支援 | 9時間 |
コミュニケーション技術 | 傾聴・対話・接遇マナー・信頼関係づくり | 6時間 |
生活支援技術 | 入浴・食事・排泄・衣服着脱などの介助技術 | 75時間 |
こころとからだのしくみ | 加齢による変化・疾病の理解・リハビリ基礎 | 12時間 |
認知症・障害の理解 | 認知症ケア・障害特性・行動心理の理解 | 10時間 |
振り返り・修了評価 | 学びのまとめ・実技評価・筆記試験 | 12時間 |
このように、介護に関する「知識」と「技術」の両方をバランスよく学べる内容になっています。
学習の流れ:通信からスクーリングまで
① 通信学習(在宅課題)
最初の1〜2ヶ月は、テキストを使って自宅でレポート課題を進めます。
レポート内容は、介護の基本理念や職業倫理、疾病理解などの基礎知識が中心です。
- 提出レポート数:10〜15科目分
- 形式:選択式+記述式
- 提出方法:郵送またはオンライン
内容はテキスト内に答えがある形式が多いため、難易度は高くありません。
ただし、提出期限を守ることが修了条件となるため、計画的な学習が必要です。
② スクーリング(通学実技)
通信課題を提出した後は、スクールでの実技授業(スクーリング)が行われます。
介護現場で必要な動作や介助技術を、実際に体を動かしながら学びます。
主な実技内容:
- 食事介助(摂食・嚥下の支援)
- 入浴介助・清拭・衣類着脱
- 排泄介助(トイレ誘導・おむつ交換)
- 体位変換・移乗介助(ベッド→車椅子など)
- 口腔ケア・整容支援
- 感染予防・安全確認・事故防止
講師が一人ひとりの動作を確認しながら指導するため、未経験者でも安心して学べます。
受講者同士で介助を実践し合うため、現場感覚を掴みやすいのも特徴です。
③ 修了試験(筆記・実技評価)
すべての科目を受講した後に、修了評価として筆記試験と実技試験が行われます。
これは「落とすための試験」ではなく、理解度の確認が目的です。
- 筆記試験:30〜50問(選択式)
- 実技評価:ベッドメイキング・移乗介助など
評価は6〜7割の正答で合格基準を満たすケースが多く、
真面目に受講すれば誰でも修了可能です。
初任者研修で学べる具体的スキル
130時間の研修を通じて、次のようなスキルを習得できます。
- 安全で快適な介助技術(入浴・食事・排泄など)
- 利用者との信頼関係を築くコミュニケーション力
- 高齢者・障がい者の心理や身体的特徴の理解
- チームケアの重要性・他職種との連携スキル
- 感染症予防や衛生管理などの安全知識
これらはすべて現場で必要とされる実践的なスキルであり、
介護職として働くうえでの基礎力となります。
カリキュラムの特徴とポイント
① 実践重視の内容
カリキュラムの約6割(75時間)は「生活支援技術」に充てられており、
介護の現場で即戦力として活躍できるよう設計されています。
② 利用者の尊厳・自立支援を重視
単なる介助技術ではなく、「どうすれば利用者が自分らしく生活できるか」を考える
“考える介護”を学ぶ点が大きな特徴です。
③ 未経験者でも安心のステップ構成
初めて介護を学ぶ人にも理解しやすい順序でカリキュラムが構成されており、
講師のサポート体制も充実しています。
初任者研修の評価基準
修了認定は以下の3つの条件を満たすことで取得できます。
- 全130時間の出席(欠席時は補講対応)
- 通信課題の全提出と合格
- 修了試験(筆記・実技)の合格
出席率が重要で、全授業の8割以上の出席が必須。
1日でも欠席が続くと再受講になる場合があるため、スケジュール管理が大切です。
修了後に活かせるフィールド
初任者研修で学んだ知識・技術は、さまざまな介護現場で活かせます。
- 特別養護老人ホーム(特養)
- デイサービス・ショートステイ
- 訪問介護(生活援助・身体介助)
- 有料老人ホーム・グループホーム
また、修了後に実務者研修→介護福祉士へと進む際の基礎にもなります。
まとめ:初任者研修のカリキュラムは「現場力」を育てる
初任者研修のカリキュラムは、130時間を通して介護の基礎力と考える力を養うよう設計されています。
通信と通学を組み合わせて進めることで、未経験者でも現場に出てすぐに活かせるスキルが身につきます。
介護職を目指す人にとって、初任者研修は最初の学びの場であり、将来への土台です。
利用者の笑顔を支えるプロフェッショナルを目指して、
カリキュラムを通じて確実にステップアップしていきましょう。

飲食・WEB・デザイン・出版など、様々な業界を経てきた現役のケアワーカー。介護にたどり着いたのは、大好きだった祖母の自宅介護がきっかけ。ケアチルでは、現場での視点も交えつつ、これから介護業界に携わろうとしている方、すでに業界にいて岐路に立っている方に向けて、介護業界の情報を分かりやすくお届けします。