訪問介護の仕事では、「予定どおりに終わらない」「気づけば次の訪問に遅れている」という状況が起こりやすくなります。
特に、移動を伴う訪問介護では、施設勤務以上に時間のズレが連鎖しやすいのが特徴です。
「自分の段取りが悪いのでは…」と感じてしまう方も多いですが、
実際には、訪問介護ならではの構造的な理由で予定が押してしまうケースがほとんどです。
この記事では、訪問介護でスケジュールが押しやすくなる理由を整理しながら、
現場で実践できる調整の考え方と、無理を溜め込まないための相談ポイントを詳しく解説します。
① 訪問介護は「予定どおりに進まない前提」の仕事
まず理解しておきたいのは、訪問介護はもともと予定がズレやすい仕事だということです。
予定が押しやすい主な要因:
- 天候(雨・雪・猛暑)による移動時間の増加
- 交通事情(渋滞・事故・公共交通の遅れ)
- 利用者さんのその日の体調変化
- 急な訴えや追加の支援
- 家族対応が必要になる場面
これらは、介護職側がどれだけ努力しても完全にはコントロールできない要素です。
「毎回時間どおりに終わらせなければ」と自分を追い込みすぎると、
心身の負担が大きくなり、結果的にミスや事故につながるリスクも高まります。
② 記録を見直すと「実際にかかっている時間」が見えてくる
スケジュール調整の第一歩は、
実際にどれくらい時間がかかっているのかを把握することです。
予定上は30分のサービスでも、
- 準備・片付けに時間がかかっている
- 利用者さんの動きがゆっくりな日が多い
- 声かけや説明に想定以上の時間を要している
といった理由で、実際には35分〜40分かかっているケースも少なくありません。
日々の記録を振り返り、
「理想の時間」ではなく「現実の時間」
を基準に考えることが、無理のない調整につながります。
③ スケジュールには「最初から余白」を持たせる
訪問介護では、予定をギリギリに詰め込むほど、
一つの遅れがその後すべてに影響してしまいます。
可能であれば、
- 移動時間を実測より短く見積もらない
- 連続訪問の合間に5〜10分の余白を入れる
- 天候が悪い日は特に余裕を持つ
といった調整が効果的です。
「余白=サボり」ではなく、
遅れを防ぐための安全バッファと考えましょう。
④ 押してしまいそうなときは“早めの共有”がトラブルを防ぐ
どうしても予定が押してしまいそうな場合、
一人で抱え込まず、早めに状況を共有することが重要です。
例えば、
- 次の訪問に遅れそうな時点で責任者に連絡する
- 理由(体調不良・交通事情など)を簡潔に伝える
- 利用者さんや家族への連絡が必要か確認する
早めに共有することで、
- 他スタッフのフォローを検討できる
- クレームや誤解を防げる
- 無理な巻き返し行動をせずに済む
といったメリットがあります。
⑤ 「毎回押している」なら件数や内容の見直しが必要
一時的な遅れではなく、
- 毎日スケジュールが押している
- 常に時間に追われている
という状態が続いている場合は、
個人の工夫だけで解決する段階を超えている可能性があります。
その場合は、
- 訪問件数が適正か
- サービス内容と時間配分が合っているか
- 移動ルートが現実的か
といった点を、責任者と一緒に見直すことが必要です。
「忙しいから言いづらい」と我慢を続けると、
心身の疲労や離職につながりやすくなります。
⑥ 押さないために“急ぎすぎる”方がリスクになることも
予定が押していると、
「早く終わらせなきゃ」
という気持ちが強くなりがちです。
しかし、急ぎすぎることで、
- 声かけが雑になる
- 安全確認が不十分になる
- 利用者さんが不安になる
といったリスクが高まります。
訪問介護では、
時間厳守よりも安全と安心が優先されるべき場面も多くあります。
⑦ 「調整を相談すること」は責任感のある行動
スケジュール調整を相談することに対して、
「自分の能力不足と思われるのでは」と不安になる方もいます。
しかし実際には、
現実を正しく伝え、調整を求めることはプロとしての責任ある行動
です。
無理を重ねて事故やトラブルが起きてからでは、
現場全体への影響はさらに大きくなります。
まとめ:訪問介護は「押さない工夫」と「共有」がカギ
訪問介護で予定が押しやすいのは、
仕事の性質上、避けられない部分も多くあります。
① 予定がズレやすい仕事だと理解する
② 記録から実際の所要時間を見直す
③ スケジュールに余白を持たせる
④ 押しそうな時は早めに共有する
⑤ 慢性的なら件数や内容を見直す
⑥ 急ぎすぎによるリスクを意識する
⑦ 調整相談は前向きな行動
一人で抱え込まず、
チームとして現実的なスケジュールを整えていくことが、
長く安心して訪問介護を続けるための大切なポイントです。
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飲食・WEB・デザイン・出版など、様々な業界を経てきた現役のケアワーカー。介護にたどり着いたのは、大好きだった祖母の自宅介護がきっかけ。ケアチルでは、現場での視点も交えつつ、これから介護業界に携わろうとしている方、すでに業界にいて岐路に立っている方に向けて、介護業界の情報を分かりやすくお届けします。




