家族と本人の希望が食い違う場合の調整は?|双方に寄り添い、最善の着地点を探るための関わり方

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介護の現場では、本人の希望と家族の意向が食い違うという場面が頻繁に起こります。
「本人は自宅に帰りたいと言うが、家族は施設での生活を望んでいる」
「本人は自由に動きたいが、家族は転倒が心配で制限を求める」
「本人は食事量を減らしたいが、家族はしっかり食べてほしい」――。

どちらも悪くなく、どちらも“その人を思っての気持ち”であるところが、この問題を難しくしています。
介護職員として大切なのは、どちらかの味方になるのではなく、双方の思いを丁寧に受け止め、現実的に歩み寄れる方法を一緒に探すことです。

この記事では、本人・家族・介護スタッフの間に生じる意向のズレをどのように調整し、安心できる支援につなげるかを、現場目線で詳しく解説します。

① 本人の希望と家族の心配が対立するのは“珍しくない”

本人は「今まで通りに生活したい」という思いを、家族は「安全に、長く生活してほしい」という思いを持っています。
この両者は対立しやすく、どちらも正しいため調整が難しくなります。

よくある食い違いの例:

  • 本人:一人で歩きたい
    家族:転倒が心配なので車いすを使ってほしい
  • 本人:自由に外出したい
    家族:迷子や事故が怖い
  • 本人:好きな物だけ食べたい
    家族:栄養バランスを重視したい
  • 本人:自宅に戻りたい
    家族:介護負担のため施設で過ごしてほしい

このようなズレが起きたとき、スタッフは双方の気持ちに寄り添いながら調整を進める“橋渡し役”となります。

② まずは双方の話を“評価せず・遮らず”丁寧に聞く

意向調整の第一歩は、

● 本人の思い
● 家族の心配や背景

をそれぞれ丁寧に聞き取ることです。

本人側のよくある背景:

  • できることを続けたい
  • 役割や自尊心を保ちたい
  • 生活の自由が奪われることへのストレス

家族側の背景:

  • 安全への強い不安
  • 過去の事故経験が心に残っている
  • 介護負担で疲れている
  • 罪悪感や責任感で判断が揺れやすい

どちらも「その人のため」を思った気持ちから生まれているため、どちらも正しいという前提で聞くことが重要です。

③ 「歩み寄れるポイント」を一緒に探る姿勢が大切

本人と家族の意向が真っ向から対立しているように見えても、
実はその間に共通の目的(安全・尊厳・安心)が隠れていることが多いです。

調整がうまくいく関わりの例:

  • 本人の希望を尊重しつつ、安全を確保する方法を探す
  • 家族が安心できる工夫を加えながら、本人の自由度を保つ
  • 「全部かゼロか」ではなく、段階的にチャレンジする提案をする

具体例:

  • 本人は歩きたい → 家族は危険 →
    → 歩行器を使い職員が付き添う形ならどうか?
  • 本人は外出したい → 家族は心配 →
    → 敷地内の散歩から始め、徐々に範囲を広げる
  • 本人は自宅に戻りたい → 家族は不安 →
    → ショートステイと在宅支援を併用して様子を見る

このように、“どこなら可能か”を一緒に考える姿勢が、本人・家族双方の安心につながります。

④ スタッフだけで抱え込まず、多職種での連携を

本人と家族の意向が強く対立している場合、介護スタッフだけで調整しようとすると精神的負担が大きくなります。

そのため、次の専門職と協力することが重要です。

  • ケアマネジャー(全体方針の整理)
  • 相談員(家族調整のプロ)
  • 看護師(安全や体調面からの助言)
  • 施設長・管理者(判断の最終調整)

多職種が入ることで、

  • 家族の不安が軽減する
  • 本人の希望が専門的視点から整理される
  • スタッフの負担が減る

というメリットがあります。

⑤ 調整のゴールは「どちらかが勝つこと」ではなく、“双方の納得”

意向調整では、本人と家族のどちらかの希望を押し通すのではなく、

● 双方が「これなら受け入れられる」と感じる着地点

を探すことが最終的なゴールです。

そのためには、

  • 小さな合意を積み重ねる
  • 一度決めたことも、状況に応じて柔軟に見直す
  • 本人と家族どちらも“尊重された”と感じる対応をする

この3つが非常に重要になります。

まとめ:本音を引き出し、歩み寄りを一緒に探す“伴走者”になることが大切

本人と家族の希望が食い違うのは、どちらにも大切な思いがあるからこそ起きる自然な現象です。
スタッフがその間に立ち、丁寧に寄り添いながら調整することで、双方が安心して介護に向き合えるようになります。

① 食い違いは不自然なことではないと理解する
② 本人・家族どちらの気持ちも評価せず丁寧に聞く
③ 「どこなら歩み寄れるか」を一緒に探す
④ 多職種と連携して負担を分散する
⑤ “どちらかの勝ち”ではなく“双方の納得”をめざす

調整は時間がかかることもありますが、
その過程こそが本人の尊厳を守り、家族の安心を支える重要なケアとなります。

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