介護の仕事のなかでも、入浴介助はとくに体力を消耗しやすい業務です。
立ったりしゃがんだりを繰り返し、前かがみの姿勢が続き、濡れた環境で踏ん張り続ける…気づけば勤務の後半にはヘトヘト、という方も多いのではないでしょうか。
体力的な負担が大きい状態を放置すると、腰痛・膝痛・肩こりなどの不調につながり、最悪の場合は長期の休職や離職につながることもあります。
だからこそ、「根性で乗り切る」のではなく、「身体を守る介助の仕方」を身につけることがとても大切です。
この記事では、入浴介助で体力を少しでも温存し、無理なく続けていくための姿勢・準備・チームワークのポイントを紹介します。
① 姿勢と“支点”を見直すと負荷が一気に変わる
入浴介助で体力が削られる大きな理由のひとつが、無意識のうちに「しんどい姿勢」で介助していることです。
とくに注意したいのは次のような姿勢です。
- 前かがみの中腰姿勢が長く続いている
- 片足だけに体重をかけて支えている
- 浴槽に手をついて腕力だけで支えている
- ベッドやシャワーチェアが低すぎる・高すぎる
これらはすべて、腰や膝、肩に大きな負担をかけます。
まずは「自分がどこを支点にして、どこに力を入れているか」を意識してみましょう。
ポイント:
- 自分の足幅は肩幅よりやや広めにとり、重心を低くする
- 膝を軽く曲げ、腰だけでなく“足全体”で支える意識を持つ
- ベッドやシャワーチェアの高さを、自分の腰〜太ももあたりに調整する
- 利用者の身体を「持ち上げる」より「滑らせる・移動させる」動きに変える
ちょっとした姿勢の違いだけでも、1日の終わりの疲労感は大きく変わります。
② ベッドやイスの高さ調整は「最初のひと手間」が肝心
入浴介助前に、ベッドやシャワーチェアの高さを自分に合わせて調整しておくことは、体力を守るうえでとても重要です。
高さが合っていないと、
- かがみっぱなしで腰に負担がかかる
- 利用者の身体を上げ下げする時に腕力に頼ってしまう
といった状態になりやすくなります。
入浴介助の前に数十秒だけ時間をとって、
- ベッドの高さを「自分の腰くらい」の高さに調整する
- シャワーチェアの高さが低すぎないか確認する
といった“ひと手間”をかけることで、介助中の身体の負担がぐっと軽くなります。
③ 洗身用具やタオルを事前に配置して「無駄な動き」を減らす
入浴介助で消耗するのは、介助そのものだけではありません。
何度も物を取りに行く・探す・戻るといった“無駄な動き”も、体力をじわじわと奪っていきます。
そこで大切なのが、事前準備を徹底することです。
事前に用意しておきたいもの:
- ボディソープ・シャンプー・洗身タオル
- バスタオル・フェイスタオル
- 着替え一式・失禁対策の物品
- 足拭きマット・滑り止めマット
これらを「手を伸ばせば届く範囲」に揃えておくことで、行ったり来たりの回数が減り、体力だけでなく時間のロスも防げます。
また、利用者ごとに準備物をざっくりセット化しておくと、入浴介助の流れ自体が安定しやすくなります。
④ 無理な場面は“2人介助”に切り替える勇気を持つ
「なんとか一人でやらなきゃ」と頑張りすぎてしまうと、身体を傷めるリスクが一気に高まります。
とくに、
- 立位が不安定な方
- 体格差が大きい方
- 急に動きやすい方
の介助は、スタッフ一人では危険な場面も少なくありません。
そんな時は、迷わず2人介助へ切り替える判断が必要です。
例:
- 「ここは2人で介助したいので、お願いできますか?」
- 「この方は移乗のときだけ2人でやるようにしましょう」
身体を守ることは、自分のためだけでなく、利用者の安全のためでもあります。
無理をして転倒させてしまうより、「助けを呼ぶ」選択をしたほうが、結果的に責任ある対応になります。
⑤ チームで役割を共有し、「一人で抱えない」体制を作る
入浴介助の負担は、個人の体力だけの問題ではなく、チーム全体の体制にも関わります。
たとえば、
- 力仕事が続く時間帯を分散させる
- 移乗の多い方は必ず2人介助と決めておく
- 体格差が大きい利用者には、男性スタッフや体力に余裕のあるスタッフが入るよう調整する
といった工夫をチームで共有しておくと、特定の人だけが疲れ切る状況を防ぎやすくなります。
また、「腰がつらい」「膝を痛めそう」と感じた段階で、早めに相談することも大切です。
我慢して悪化してからでは遅く、長期的に働き続けるためには、身体のサインに敏感になることがポイントです。
まとめ:入浴介助は「工夫」と「チームワーク」で体力を守る
入浴介助で体力がもたないと感じるのは、能力や根性の問題ではありません。
姿勢・支点・準備・人員体制といった「仕組み」を整えていないことが大きな原因です。
今日から意識したいポイントは、次の3つです。
① 自分の姿勢とベッド・イスの高さを見直す
② 洗身用具・タオルを事前に配置して無駄な動きを減らす
③ 無理な場面は2人介助に切り替え、チームで役割を共有する
これらを少しずつ取り入れていくことで、入浴介助の負担は必ず軽くなります。
自分の身体を守りながら、利用者にとっても安心できる入浴時間を一緒に作っていきましょう。
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飲食・WEB・デザイン・出版など、様々な業界を経てきた現役のケアワーカー。介護にたどり着いたのは、大好きだった祖母の自宅介護がきっかけ。ケアチルでは、現場での視点も交えつつ、これから介護業界に携わろうとしている方、すでに業界にいて岐路に立っている方に向けて、介護業界の情報を分かりやすくお届けします。