
介護の仕事を始めたいと考えたとき、まず耳にするのが「介護職員初任者研修」。
かつての「ホームヘルパー2級」にあたる資格で、介護職の入門資格として多くの人が最初に取得しています。
この記事では、初任者研修の資格の概要・目的・取得方法・学べる内容をわかりやすく解説します。
介護職員初任者研修とは?
介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)とは、
介護職として働くための基本的な知識と技術を学ぶ国指定の研修制度です。
厚生労働省が定めたカリキュラムに沿って行われ、介護職としての「基礎力」を身につけることを目的としています。
受講後に修了証明書が発行され、訪問介護や施設介護などの現場で介助業務に携わることが可能になります。
初任者研修の目的
初任者研修の目的は、単に介助方法を学ぶだけではなく、
利用者の尊厳を守り、安全で質の高い介護を提供できる人材を育成することにあります。
- 介護の基本的理念を理解する
- 利用者の心身状態に応じた介助技術を学ぶ
- チームケアや他職種との連携を理解する
- 職業倫理やコミュニケーション能力を養う
つまり、介護の「やり方」だけでなく「考え方」も学ぶ研修といえます。
初任者研修のカリキュラム概要
初任者研修のカリキュラムは130時間で構成されています。
通信学習と通学(スクーリング)の組み合わせで進められ、
働きながらでも取得できるように設計されています。
科目区分 | 主な内容 | 学習時間 |
---|---|---|
職務の理解 | 介護職の役割・職業倫理・チームケア | 6時間 |
介護の基本 | 介護の理念・人権・尊厳・安全な支援 | 9時間 |
コミュニケーション技術 | 傾聴・共感・接遇マナー | 6時間 |
生活支援技術 | 食事・入浴・排泄・移動などの日常介助 | 75時間 |
こころとからだのしくみ | 加齢変化・疾病・リハビリ・栄養など | 12時間 |
認知症・障害の理解 | 症状・行動心理・支援方法 | 10時間 |
振り返り・実技試験 | 学習のまとめ・介助実技評価 | 12時間 |
合計130時間の中には、演習・実技練習が多く含まれます。
そのため「実践型の学び」ができ、現場に出てすぐに役立つスキルを習得できます。
受講対象と受講資格
初任者研修には年齢・学歴・経験などの受講制限はありません。
介護未経験者でも誰でも受講可能です。
受講者の多くは次のような方です。
- 介護業界への転職を考えている人
- 家族の介護に備えたい人
- パート・未経験から福祉の仕事を始めたい人
- 将来的に介護福祉士を目指す人
特に女性や中高年層の受講者が多く、再就職支援としても注目されています。
初任者研修の学習スタイル
① 通信学習(自宅学習)
テキストを使用してレポートを提出しながら、基礎知識を習得します。
近年ではオンライン教材や動画講義を活用するスクールも増えています。
② スクーリング(通学授業)
通学では、介護技術を実際に体験的に学びます。
ベッドメイキング、体位変換、食事介助、入浴介助など、
現場を想定した演習を講師の指導のもとで行います。
③ 修了試験(実技・筆記)
最終日には、学んだ内容の理解を確認する「筆記試験」と「実技評価」が行われます。
この試験に合格すれば修了証明書が交付されます。
初任者研修を取得するメリット
① 無資格よりも就職・転職に有利
介護職の求人では、「初任者研修修了者以上」という条件が設定されていることが多く、
資格を持つことで採用率や時給が上がる傾向があります。
② 実務者研修・介護福祉士へのステップアップ
初任者研修を修了すれば、次に受ける実務者研修の一部科目が免除されます。
そのため、キャリアアップを目指す人の最初の一歩として最適です。
③ 家族介護にも活かせる
高齢の家族を自宅で介護している方にとっても、
安全で負担の少ない介助技術を学べる点は大きなメリットです。
初任者研修の修了率と難易度
初任者研修の修了率は全国平均で95〜98%と非常に高く、
真面目に受講すれば誰でも修了可能です。
難易度は「やや易しい」レベルで、試験も学んだ内容の理解を確認するもの。
落とすための試験ではなく、安心して学べる入門資格です。
初任者研修の今後の需要
厚生労働省の推計によると、2025年には介護職員が約32万人不足すると言われています。
そのため、介護業界全体で初任者研修修了者の採用ニーズは急増しています。
介護の入り口資格でありながら、将来的なキャリアや安定性が高く、
長く働ける専門職の基礎として注目されています。
まとめ:初任者研修は介護職の第一歩
初任者研修は、介護職を始めるための最初の登竜門です。
未経験からでも安心して受講でき、学んだ内容は現場でそのまま役立ちます。
介護の仕事に興味がある人、将来的に介護福祉士を目指す人にとって、
この資格はキャリア形成のスタートラインとなるでしょう。
費用や期間はスクールによって異なりますが、
「まず介護の基礎をしっかり学びたい」という人は、
初任者研修の受講から一歩を踏み出してみてください。

飲食・WEB・デザイン・出版など、様々な業界を経てきた現役のケアワーカー。介護にたどり着いたのは、大好きだった祖母の自宅介護がきっかけ。ケアチルでは、現場での視点も交えつつ、これから介護業界に携わろうとしている方、すでに業界にいて岐路に立っている方に向けて、介護業界の情報を分かりやすくお届けします。