介護現場では、日勤と夜勤で勤務帯が分かれていることが多く、
「日勤と夜勤で話が噛み合わない」「情報のズレを感じる」という悩みは非常によく聞かれます。
日勤は日勤、夜勤は夜勤でそれぞれ忙しく、
「ちゃんと申し送ったはずなのに伝わっていない」
「夜の様子が分からず対応に困った」
といった経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。
この情報ギャップを放置すると、
ケアの一貫性が失われたり、利用者さんの不安や混乱につながることもあります。
この記事では、日勤と夜勤で情報ギャップが生まれやすい理由を整理しながら、
現場で実践できる「埋め方」「共有の工夫」について、具体的に解説します。
① 日勤と夜勤で「見えている世界」がそもそも違う
まず理解しておきたいのは、
日勤と夜勤では見えている場面そのものが大きく違うという点です。
日勤で見えやすいこと
- 食事量・水分摂取
- 入浴・レクリエーション時の様子
- 他利用者との関わり
- 職員との会話や反応
夜勤で見えやすいこと
- 睡眠の質・中途覚醒
- 夜間の不安・訴え
- 排泄リズム
- せん妄や混乱の出方
どちらかが「見落としている」のではなく、
時間帯によって見える課題が違うという前提を共有することが、
ギャップを埋める第一歩になります。
② 情報ギャップが生まれやすい理由
日勤と夜勤の情報がうまくつながらない背景には、
いくつかの共通した原因があります。
- 申し送り時間が短く、要点しか伝えられない
- 忙しさから記録が最低限になりがち
- 「当たり前」と思って書かれていない情報がある
- 日勤・夜勤それぞれの優先事項が違う
特に、
「この程度は分かっているだろう」
という思い込みが、情報ギャップを広げる原因になりやすい点には注意が必要です。
③ 申し送りは「事実+時間帯ならではの視点」を意識する
情報ギャップを埋めるうえで重要なのが、
申し送りや記録の書き方です。
単なる出来事の羅列ではなく、
その時間帯だからこそ見えた様子を意識して伝えることがポイントになります。
夜勤から日勤への申し送り例
- 「2時頃に何度もナースコールあり。不安訴え強め」
- 「朝方まで眠りが浅く、トイレ回数多かった」
日勤から夜勤への申し送り例
- 「日中は食事量少なめで疲れた様子」
- 「午後から落ち着きなく、夕方に不安強まる傾向あり」
こうした情報があるだけで、
次の勤務帯は心構えを持って関われるようになります。
④ 記録は「夜はどうか」「昼はどうか」を意識して残す
記録を書くときも、
「今の時間帯だけの視点」になっていないかを意識しましょう。
例えば、
- 日中の様子が夜間の不安につながっていないか
- 夜の睡眠状況が日中の活動量に影響していないか
といった時間帯をまたいだ視点を少し添えるだけで、
情報のつながりが生まれます。
長文である必要はなく、
一言でも「次の勤務帯を意識した情報」を残すことが大切です。
⑤ 定期的なミーティングがギャップを縮める
日々の申し送りだけでは、
どうしても伝えきれないことがあります。
そこで効果的なのが、
定期的なミーティングでの情報共有です。
ミーティングで話し合いたいポイント:
- 日勤側から見た困りごと
- 夜勤側から見た困りごと
- 同じ利用者さんでも時間帯で違う様子
顔を合わせて話すことで、
- 「夜はそんなに大変だったんだ」
- 「日中はこんな対応をしていたんだ」
と、互いの理解が深まり、
「分かってもらえない」という不満も減っていきます。
⑥ 「どちらが大変か」ではなく「どうつなぐか」を意識する
日勤と夜勤の間で、
- 「夜勤の大変さが分かってもらえない」
- 「日勤の忙しさを軽く見られている」
と感じることもあるかもしれません。
しかし、大切なのは優劣をつけることではなく、
どう情報をつなぎ、利用者さんにとって一貫したケアを提供できるか
という視点です。
お互いの大変さを理解し合う姿勢が、
結果的に情報共有の質を高めます。
⑦ 情報ギャップが埋まるとケアの質も安定する
日勤と夜勤の情報がしっかりつながると、
- 利用者さんが「説明し直さなくていい」
- 対応のブレが減る
- 不安や混乱が少なくなる
といった変化が生まれます。
これは利用者さんだけでなく、
職員自身の負担軽減にもつながります。
まとめ:情報ギャップは「視点の違い」を知ることで埋められる
日勤と夜勤で情報ギャップが生まれるのは、
それぞれが違う場面を見ているからこそ起こるものです。
① 日勤・夜勤で見える課題は違う
② 情報ギャップは構造的に起こりやすい
③ 申し送りは時間帯ならではの視点を意識する
④ 記録は次の勤務帯を意識して残す
⑤ ミーティングで相互理解を深める
⑥ 優劣ではなく「つなぐ視点」を持つ
⑦ 情報共有がケアの安定につながる
少しの工夫と意識で、
日勤と夜勤の間にある溝は、確実に埋めていくことができます。
チーム全体で「情報をつなぐ」意識を持ちながら、
より安心できるケア環境を整えていきましょう。
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飲食・WEB・デザイン・出版など、様々な業界を経てきた現役のケアワーカー。介護にたどり着いたのは、大好きだった祖母の自宅介護がきっかけ。ケアチルでは、現場での視点も交えつつ、これから介護業界に携わろうとしている方、すでに業界にいて岐路に立っている方に向けて、介護業界の情報を分かりやすくお届けします。





