介護現場で働いていると、「マニュアル上のルール」と「現場でなんとなく続いている慣習」が食い違っている場面に出会うことがあります。
例えば、就業規則や業務手順書には書かれていないけれど、「このフロアでは昔からこうしている」「前のリーダーがそう言っていた」という理由だけで続いているやり方などです。
新人や異動してきたスタッフからすると、「それって本当に正しいの?」「ルールと違う気がする…」とモヤモヤしやすいポイントでもあります。
しかし、頭ごなしに否定すると現場の反発を招き、逆に慣習だけを優先しすぎると安全面や法令面のリスクが高まることもあります。
この記事では、ルールと慣習が食い違ったときに、どのように整理し、誰と相談し、どう“より良い形”を探していけばよいのかを解説します。
① まずは「ルールの根拠」「慣習の理由」を両方確認する
ルールと慣習が食い違っていると感じたとき、最初にやるべきことは一方だけを正解と決めつけないことです。
多くの場合、
- ルール:法令や事故防止、組織全体の方針に基づいて決められたもの
- 慣習:その現場なりに「やりやすい」「効率がいい」という理由から生まれたもの
という、それぞれの背景があります。
そのため、まずは次の2つを落ち着いて確認してみましょう。
- ルールは何のためにあるのか?(根拠・目的)
- 慣習はどんな経緯や困りごとから生まれたのか?
たとえば、
「本来は2人介助の場面を、慣習的に1人で対応している」
という場合、
ルール側には安全確保の理由があり、
慣習側には人手不足や忙しさの中で生まれた“現場の苦肉の策”があるかもしれません。
どちらかをすぐに否定するのではなく、まずは両方の事情を知ることがスタートです。
② 安全面・法令面のリスクを上長と一緒に確認する
ルールと慣習のどちらを優先するべきかを考える上で、最も重要なのが安全面と法令面です。
特に、次のようなポイントに注意が必要です。
- 転倒・誤嚥・虐待リスクにつながらないか
- 介護保険制度上の基準や人員配置を満たしているか
- 事故が起きた際に説明できる運用かどうか
これらの判断を一スタッフだけで行うのは危険です。
気になる点があれば、リーダー・主任・管理者などの上長に相談し、
- 「この慣習はルールと違うように感じるのですが、どう考えればいいですか?」
- 「安全面・法令面の観点から見て問題はありませんか?」
といった形で、冷静に意見を求めることが大切です。
“独断で変えない・一人で抱え込まない”ことが、トラブルを防ぐポイントです。
③ 現場だけで抱えず、「チーム全体で話し合う」姿勢が重要
ルールと慣習の食い違いは、個人の問題ではなく、チーム全体・事業所全体の課題です。
そのため、「自分が我慢すればいい」「古い人のやり方に合わせるしかない」と諦めてしまう必要はありません。
むしろ、現場で働くスタッフの「これはどうなんだろう?」という疑問の声が、
より安全で働きやすい環境に見直すきっかけになることも多くあります。
話し合う場としては、
- フロアミーティング
- 事故・ヒヤリハットの振り返りの場
- 業務改善の検討会
などを活用するとスムーズです。
「責める」「正しさをぶつけ合う」のではなく、
- なぜ今のルールになったのか
- なぜこの慣習が現場に残っているのか
- どうすれば安全と働きやすさの両方を守れるか
という視点で話し合うことが大切です。
④ 「現場の工夫」と「ルールの見直し」は両立できる
ルールと慣習の食い違いが見つかったとき、
「ルールに全て合わせる」か「慣習をそのまま残す」かの二択として考えてしまうと、どちらかに我慢が生まれます。
しかし実際には、
- ルールの範囲内で、現場側が工夫する
- 現場の実態に合わせて、ルールを見直す
という両方向からのアプローチが可能です。
たとえば、
- 2人介助が原則だが、人手が足りない時間帯はシフトや動線を見直す
- 本来は書面での記録だが、タブレット入力に変更することで効率化する
といった形で、「ルールを守りつつ、現場の負担を減らす」改善ができることもあります。
⑤ 新人・中堅だからこそ気づける違和感を大事にする
長く同じ職場にいると、「なんとなく続いているやり方」を当たり前に感じてしまい、
ルールと慣習のズレに気づきにくくなることがあります。
逆に、異動してきた人や新人スタッフは、フラットな視点を持っているため、
- 「この書き方と実際の運用、違わない?」
- 「マニュアルにはこう書いてあるけれど、現場ではこうしているのはなぜ?」
といった気づきを得やすい立場でもあります。
その違和感は、決して「面倒な指摘」ではなく、
現場をより安全で働きやすくするための貴重な視点です。
感じたことは胸の内にしまっておかず、タイミングを見ながら上長やチームに相談してみましょう。
まとめ:ルールと慣習のズレは“対立”ではなく“調整”のチャンス
ルールと慣習が食い違っているとき、
「どちらかが正しくて、どちらかが間違っている」と考えてしまうと、現場にギスギスした空気が生まれがちです。
大切なのは、
・ルールの根拠を確認する
・慣習が生まれた理由を尊重する
・安全面・法令面を上長と一緒に確認する
・チーム全体で話し合い、より良い形を考える
という、“調整”の姿勢です。
ルールと慣習のズレに気づいたときこそ、現場をより良くするチャンス。
一人で抱え込まず、チームで対話を重ねながら、利用者にとってもスタッフにとっても安全で働きやすい環境づくりを目指していきましょう。
介護現場あるあるQ&A
🤝「人間関係・待遇・働き方」に悩んでいる方へ

「今の職場、ちょっと合わないかも…」と感じたら、まずは話をしてみませんか?介護職専門のアドバイザーが、あなたの希望や悩みを丁寧に聞き取り、ぴったりの職場や非公開求人をご紹介します。
待遇交渉や面接の調整、就業後のフォローまで、すべてのサポートが完全無料。 職場の雰囲気や人間関係など、ひとりでは分かりづらい情報も事前に確認できます。転職するかどうか迷っている段階でも大丈夫。相談を通して自分の強みや、より良い働き方のヒントが見えてくるはずです。
※ すべてのサービスを0円でご利用いただけます。ご相談内容は外部に共有されません。

飲食・WEB・デザイン・出版など、様々な業界を経てきた現役のケアワーカー。介護にたどり着いたのは、大好きだった祖母の自宅介護がきっかけ。ケアチルでは、現場での視点も交えつつ、これから介護業界に携わろうとしている方、すでに業界にいて岐路に立っている方に向けて、介護業界の情報を分かりやすくお届けします。