利用者さんの食事介助でよくある悩みのひとつが、「好き嫌いが多く、なかなか食べ進めてもらえない」というものです。
高齢者の場合、単なる好き嫌いだけでなく、噛みにくさ・飲み込みにくさ・香りの刺激・温度の変化など、さまざまな要因が影響していることがあります。
無理に完食を目指すのではなく、“食べられた”という成功体験を積み重ねながら、本人のペースに寄り添うことが大切です。
この記事では、好き嫌いがある利用者さんに対して、現場で取り入れやすい工夫や観察ポイントをまとめています。
① 食感・温度・大きさを変えると食べやすくなる
食事を拒否したり、特定の食品だけ避ける場合、その理由が「味」だけとは限りません。
実は、食感・温度・大きさが負担になっていることはとても多いです。
● 食感の調整
- 硬さを変える(刻む・やわらかく煮る)
- 乾いたもの → とろみをつけると食べやすくなる
- パサつきが気になる食品にはスープやあんかけを追加する
● 温度の調整
- 冷たいと味を感じにくいことがある
- 温かいほうが香りが立ち、食欲が出ることも多い
- 逆に熱すぎると刺激になり拒否されることも
● 大きさの調整
- 大きすぎると「噛むのが大変」「飲み込みが怖い」という不安に
- 一口サイズを小さくするだけで一気にハードルが下がる
好き嫌いと思っていたものが、実は食べづらさ”の問題だった、というケースは非常に多いです。
まずは一度、食事の形状や温度を見直してみましょう。
② 少量から始めて「今日は食べられた」を積み重ねる
無理に全量を食べてもらおうとすると、利用者さん側にも強いプレッシャーがかかります。
大切なのは、完食よりも成功体験です。
例えば、
- まずは一口だけ食べてもらう
- 本人が好きな食品から始めてテンポを作る
- 調子が良ければもう一口、というように少しずつ増やす
このように“ハードルを下げる”ことで、本人が「今日は食べられそう」と感じやすくなり、食事への意欲も自然と高まります。
食事は心理的な影響が大きいため、「無理なくできた」という経験こそが最大のモチベーションになります。
③ 無理に完食を求めない。本人のペースを尊重する
完食はあくまで“結果”であり、目標ではありません。
食事は利用者さんにとって、楽しみであり、安心する時間である必要があります。
強引に食べさせようとすると、
- 食事そのものが苦痛になる
- スタッフへの不信感が生まれる
- 次回以降さらに拒否が強くなる
といった逆効果につながります。
重要なのは、本人のペース・好み・状態に寄り添うことです。
- ゆっくり食べてもらう
- 途中で休んでも良いと伝える
- 「無理なくできる範囲」でサポートする
- できた部分をしっかり肯定する
この積み重ねが、食事時間の安心感へとつながります。
④ 拒否の背景に“体調の変化”が隠れていることもある
好き嫌いではなく、体調不良のサインが原因のこともあります。
- 口内炎・歯痛
- 飲み込みにくさ(嚥下機能の低下)
- 発熱・倦怠感
- 便秘
- 胃不調・食欲低下
- 味覚の変化
特に、急に苦手が増えた場合は、身体面のチェックが必要です。
「前は食べられていたのに、最近急に…」という変化は要注意です。
⑤ 好き嫌いの情報はチームでこまめに共有する
食事の好みは個別性が強く、また体調によっても変化します。
一人のスタッフだけが把握していても、食事の介助が安定しません。
共有のポイント:
- 「今日は温かいものが食べやすそうだった」
- 「刻んだら食べ進みが良かった」
- 「魚より肉のほうが反応が良い」
- 「飲み物を先に飲むと食事が進む」
こうした小さな情報は、チーム全体のケアの質を大きく高めます。
まとめ:食事の好き嫌いは“工夫”と“成功体験”で変わる
食事の好き嫌いは、単なる嗜好だけでなく、食べづらさ・体調・心理などさまざまな要因が重なって起きるものです。
① 食感・温度・大きさを調整
② 少量から始めて成功体験を積む
③ 完食を強要せずペースを尊重
④ 背景に体調変化がないか確認
⑤ チームでこまめに情報共有
この5つを意識することで、本人にとってもスタッフにとっても“安心できる食事時間”をつくることができます。
一人ひとりに合わせた工夫を積み重ねながら、無理のない食事支援を行っていきましょう。
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飲食・WEB・デザイン・出版など、様々な業界を経てきた現役のケアワーカー。介護にたどり着いたのは、大好きだった祖母の自宅介護がきっかけ。ケアチルでは、現場での視点も交えつつ、これから介護業界に携わろうとしている方、すでに業界にいて岐路に立っている方に向けて、介護業界の情報を分かりやすくお届けします。