新人スタッフが最初にぶつかりやすい悩みのひとつが、「利用者さんの名前を覚えられない」という問題です。
介護施設には多くの利用者がいて、年齢も特徴もさまざま。入職してすぐの時期は、顔・名前・部屋番号・家族背景など、覚えるべき情報が一気に押し寄せてきます。
しかし、名前がなかなか覚えられなくても落ち込む必要はありません。
名前は「覚え方のコツ」を意識するだけで、ぐんと記憶しやすくなります。
この記事では、介護現場で実践しやすい“名前を覚える技術”を具体的に紹介します。
名前を覚えられない理由は「名前だけで覚えようとする」から
多くの人がつまずく原因は、名前単体で覚えようとするためです。
人の名前は、情報としては非常に抽象的で、視覚的・感情的な手がかりが少ないため、記憶に残りにくいという特徴があります。
たとえば、
「佐藤さん…どの人だっけ?」
「田中さんって、どの部屋の?」
といったように、名前が“記号”として浮いてしまい、結びつきが弱い状態になりがちです。
そこで重要になるのが、名前を別の情報と結びつけること(=連想記憶)です。
① 特徴やエピソードとセットで覚える
名前を覚えるコツは、特徴・行動・過去のエピソードなどの「意味のある情報」と一緒に記憶することです。
たとえば──
- いつも新聞を読んでいる「〇〇さん」
- 編み物が好きな「〇〇さん」
- 散歩が日課の「〇〇さん」
- “ありがとう”をよく言ってくれる「〇〇さん」
こうした個性を絡めた覚え方は、単体の名前より圧倒的に記憶に残りやすくなります。
利用者さんとの会話や日常の動きから、「その人らしさ」をつかむことがポイントです。
② 部屋番号・家族構成など複数の情報をセットにする
名前は単独で覚えるより、複数の手がかりを組み合わせたほうが定着します。
手がかりの例:
- 部屋番号(◯号室の〇〇さん)
- 家族構成(娘さんが毎週日曜に面会に来る)
- 趣味(将棋が好き、歌が好き)
- 生活リズム(朝食が早い、入浴は午後が多い)
複数の情報が頭の中でつながることで、思い出しやすさが一気に向上します。
「部屋番号と名前」は特に強力なセットで、介護施設ならではの覚え方と言えます。
③ メモを活用して、視覚的に記憶を補強する
新人のうちは、メモ帳は必須と言っても過言ではありません。
名前を覚えるプレッシャーでパンクしないためにも、「覚えよう」より「記録しよう」の姿勢が大切です。
メモの書き方の例:
- ○○さん:1F、〇号室、息子さんと同居経験あり、散歩が好き
- △△さん:編み物が趣味、話し方がゆっくり、朝は早起き
このように「名前+特徴」をセットで記録し、隙間時間に見返すだけで定着が早まります。
徐々にメモを見る頻度が減り、自然と頭に残っていくのが実感できます。
④ 「名前で呼ぶ」回数を増やす
声に出して使うことで、記憶は圧倒的に定着します。
たとえば、
- 「〇〇さん、おはようございます」
- 「〇〇さん、今日の調子はいかがですか?」
など、意識的に名前を呼びかける回数を増やすだけで、覚えやすさが格段に向上します。
また、利用者さんも「名前を呼ばれることで安心感を得られる」ため、コミュニケーションにも良い影響が出ます。
⑤ 立ち位置・導線を利用して距離感で覚える
人の記憶には「空間記憶」が深く関わっています。
そのため、その人がいつもいる場所・よく通る場所とセットで名前を覚えるのも有効です。
たとえば──
- 食堂のいつもの席 → Aさん
- 午後は談話室によくいる → Bさん
- リハビリの時間帯によく見かける → Cさん
こうした“動きのパターン”と紐づけることで、自然と頭に入りやすくなります。
⑥ 完璧を目指さず「時間を味方にする」意識が大切
名前を覚えるには、どうしても時間が必要です。
最初の数日は覚えられなくて当然であり、誰もそれを責めません。
むしろ大切なのは、
- 焦らないこと
- 自分のペースでステップアップすること
- 徐々に「顔と名前の一致」を育てていくこと
という姿勢です。
日々接していくうちに自然と覚えられるようになり、数週間もすれば「あ、この方は…」と瞬時に思い出せるようになります。
まとめ:名前を覚えるのは「技術」。練習すれば必ずできる
名前を覚えることは才能ではなく、誰にでも身につく技術です。
「特徴とセットで覚える」「メモを活用する」「名前で呼ぶ回数を増やす」など、小さな工夫の積み重ねで、驚くほど早く覚えられるようになります。
焦らず、自分のペースで。
利用者さん一人ひとりの個性と向き合いながら、少しずつ“顔と名前の一致”を育てていきましょう。
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飲食・WEB・デザイン・出版など、様々な業界を経てきた現役のケアワーカー。介護にたどり着いたのは、大好きだった祖母の自宅介護がきっかけ。ケアチルでは、現場での視点も交えつつ、これから介護業界に携わろうとしている方、すでに業界にいて岐路に立っている方に向けて、介護業界の情報を分かりやすくお届けします。