介護の現場でよく見られる困りごとのひとつが「昼夜逆転」です。
日中に眠気が強く、夜間に目が冴えてしまうことで、生活リズムが乱れ、本人はもちろん、スタッフの夜間対応にも負担が生じます。
昼夜逆転は単なる“寝つきの悪さ”ではなく、日中の活動量・光の刺激・体調の変化・認知症の進行・環境の不一致など、さまざまな要因が複雑に影響して起こるものです。
この記事では、昼夜逆転を改善するための具体的な関わり方、環境調整、日中活動の工夫を、現場ですぐ使える形でくわしく解説します。
① 日中の活動量が少ないと、夜間眠れず昼夜逆転しやすくなる
高齢者、とくに認知症のある方は、日中の活動量が少ないと夜間に眠気が訪れず、昼間にウトウトする悪循環に陥りやすくなります。
昼夜逆転を防ぐためには、
● 日中に“軽い疲労”をつくること
がとても重要です。
具体的な方法:
- 午前中に短時間の散歩を取り入れる
- 午後に軽い体操(ストレッチ・イス体操)を行う
- レクリエーションで身体を動かす内容を選ぶ
- 居室で座りっぱなしの時間を減らす
- 水分補給をこまめにし、身体の活性を高める
「疲れすぎない程度の活動」を積み重ねることで、夜に自然な眠気が訪れやすくなります。
② 太陽光・照明を活用した“光の調整”で体内時計を整える
人の体内時計は「光の刺激」と密接に関連しています。
そのため、昼夜逆転の改善には光の調整が非常に効果的です。
ポイント:
- 午前中に太陽光を浴びる(散歩・窓際で過ごす)
- 日中は明るい場所で過ごしてもらう
- 夕方以降は少し照明を落とす(明るすぎは眠気の妨げ)
- 夜間は光刺激を避ける(廊下の電気・テレビなど)
特に認知症の方は、光の変化に敏感で、夕暮れ時に不安が強まる“サンドダウン症候群”がみられることがあります。
明るさを適切に整えるだけで落ち着きが出るケースも多いです。
③ 昼寝のタイミングと時間を見直す
昼寝は必要な休息ですが、長すぎる・遅すぎる昼寝は夜間の眠気を奪ってしまいます。
改善ポイント:
- 昼寝は15〜30分以内にする
- 15時以降の昼寝は避ける
- ベッドではなく椅子で軽い居眠り程度にとどめる
昼寝の“質と量”を整えることが、夜間の睡眠に大きく影響します。
④ 夕方〜夜間は落ち着く環境をつくり、刺激を減らす
夜になっても落ち着けない原因には、環境の刺激が多すぎることがあります。
落ち着く環境の工夫:
- テレビやラジオの音量を下げる
- 明るすぎる照明を少し落とす
- リラックスできる音楽を流す
- 好きな写真・馴染みの物を視界に入れやすい場所へ置く
- 声かけはゆっくり・穏やかに
夕方は不安が強くなる時間帯でもあるため、環境を整えることで夜間の混乱を防ぎやすくなります。
⑤ 夜の不安をやわらげる声かけ・関わり方
昼夜逆転が進むと夜間に不安や興奮が高まることがあり、声かけが重要になります。
安心を促す声かけ例:
- 「ここにいますからね。安心してください」
- 「少し一緒に落ち着きましょうね」
- 「今日はよく動きましたから、ゆっくり休みましょう」
- 「また明日も散歩しましょうね」
夜間は刺激を与えないように、短く・穏やかに・静かにが基本です。
⑥ 生活リズムの調整は“家族・医師との連携”が欠かせない
昼夜逆転は環境調整だけでなく、身体の状態や服薬、持病も大きく影響します。
施設だけで判断するのではなく、家族や医師と連携しながら総合的に整えていくことが大切です。
医師に相談したいポイント:
- 睡眠導入剤の調整が必要か
- 脱水・感染症など体調面の問題がないか
- 日中の活動量や食事量の変化がないか
家族への共有:
- 最近の睡眠リズムの変化
- 日中の活動内容
- 落ち着きや不安の様子
複数の視点で情報を集めることで、改善の糸口が見つかりやすくなります。
まとめ:昼夜逆転は“環境・光・活動”の調整で改善できる
昼夜逆転は、単独の原因ではなく、複数の要因が重なって生じます。
焦らず、少しずつ生活リズムを整えることで改善が見られるケースが多いです。
① 日中の活動量を増やして軽い疲労をつくる
② 光の調整で体内時計を整える
③ 昼寝の時間をコントロールする
④ 夜の刺激を減らして落ち着く環境をつくる
⑤ 夜間の不安には穏やかな声かけで対応
⑥ 医師・家族と連携し全体的なリズムを整える
これらを丁寧に意識することで、少しずつ昼夜のメリハリが戻り、本人の生活の質も向上します。
無理なく続けられる工夫を取り入れながら、安心できる一日の流れを一緒に作っていきましょう。
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飲食・WEB・デザイン・出版など、様々な業界を経てきた現役のケアワーカー。介護にたどり着いたのは、大好きだった祖母の自宅介護がきっかけ。ケアチルでは、現場での視点も交えつつ、これから介護業界に携わろうとしている方、すでに業界にいて岐路に立っている方に向けて、介護業界の情報を分かりやすくお届けします。
