「家に帰る」と言われた時の声かけは?|帰宅願望に寄り添うための安心コミュニケーション

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介護の現場でよく聞かれる言葉のひとつが、「家に帰りたい」「帰らせてください」という帰宅願望です。
認知症のある方に多く見られますが、体調や環境の変化、不安、生活リズムの乱れなど、さまざまな理由で誰にでも起こります。

本人にとっては「家に帰りたい」という気持ちが切実な不安の表れであり、単なるワガママではありません。
しかし、介助者としてはどう返せばいいのか迷いやすく、否定も肯定もできず困ってしまうことが多い場面です。

ここでは、「家に帰りたい」という訴えに対して、安心につながる声かけや状況の整え方を、現場で使える実践的な視点から詳しく解説します。

① 帰宅願望には“不安・混乱・環境変化”など複数の背景がある

「家に帰りたい」という言葉は、実際には家そのものを意味していないことも多く、本人の中にある不安や混乱が言葉として出ているケースがあります。

よくある背景:

  • 不安・孤独感:安心できる場所を求めている
  • 記憶の混乱:今がどこで何をする時間なのか分からない
  • 生活リズムの乱れ:夕方症候群(夕暮れ時の不安)の影響
  • 環境の変化:新しい施設・スタッフに慣れていない
  • 体調不良:落ち着かない・気持ち悪い・痛みなど
  • 役割感の喪失:「家事をしなきゃ」「仕事に行かなきゃ」と感じてしまう

つまり、「家に帰りたい」という言葉は“安心したい”という気持ちのサインであることが多いのです。

② 否定せず、共感しながら安心につながる返事をする

帰宅願望に対して最も避けるべきなのは、

「帰れません」「ここがあなたの家ですよ」

という否定や現実の押しつけです。
これは本人の不安を強め、場合によっては怒りや興奮につながることもあります。

基本の返し方:

● 共感+安心の言葉をセットにする

例:

  • 「そうなんですね。帰りたい気持ちがありますよね」
  • 「今日は暗くなってきたので、明日一緒に考えましょうね」
  • 「心配事があるのかな?ここにいる間は私がそばにいますよ」
  • 「もう少し休んでからにしましょうか」

重要なのは、強く否定せず気持ちを受け止めること。
“今すぐ帰れない”現実を伝えるよりも、本人の不安を落ち着かせる言葉を優先します。

③ 時間的な理由を使うと自然に受け入れられやすい

認知症の方は、“今すぐ帰る”という気持ちが強いことがあります。
そんな時、返し方のコツは「すぐではなく、少し先に予定をずらす」ことです。

例:

  • 「今日は遅いので、明るくなったら見に行きましょうね」
  • 「雨が強いので、少し待ちましょうか」
  • 「準備ができるまでここでゆっくりしましょう」

“今ではない”理由を自然に伝えることで、本人の不安を和らげつつ、納得感を得やすくなります。

④ 好きな話題・落ち着く空間へやさしく誘導する

帰宅願望が続く場合は、声かけだけでなく、環境や意識の転換が効果的です。

誘導の例:

  • 「お茶でも飲みませんか?」(飲食で気持ちを切り替える)
  • 「この写真、素敵ですよね」(思い出話に誘導)
  • 「テレビの続き、一緒に見ませんか?」(興味の対象へ誘う)
  • 「いつもの席で少し休みましょうか」(安心できる場所へ案内)

認知症の方は、興味が次の事柄に移ると気持ちが切り替わりやすいため、やさしい誘導は非常に有効です。

⑤ 不安の強い時は“非言語の安心”が特に効果を発揮する

言葉よりも、表情・視線・触れ方・声のトーンなど、非言語コミュニケーションのほうが安心につながるケースは多いです。

安心を伝える非言語の工夫:

  • ゆっくり目線を合わせる
  • 軽いタッチで手を握る・肩にそっと触れる
  • 柔らかい声のトーンで話す
  • 急がず、落ち着いた動作で接する

不安が強い時ほど、この“雰囲気の安心”が重要です。

⑥ 夕方〜夜に帰宅願望が増える場合は生活リズムも見直す

帰宅願望は“夕暮れ症候群(サンドダウン症候群)”として知られ、
夕方〜夜に強まることが多いと言われています。

対策例:

  • 日中の活動量を少し増やす
  • 昼寝は短めにする
  • 夕方の照明を早めにつける
  • 騒がしすぎない環境に整える

生活リズムや環境が整うだけで、帰宅願望が落ち着くケースも少なくありません。

まとめ:「家に帰る」は不安のサイン。否定せず安心を届けることが大切

帰宅願望は本人の“心の不安”が表れた大切なサインです。
無理に現実を突きつけるのではなく、共感と安心を中心に返していくことが何よりの支援になります。

① 否定しない。短く安心できる言葉を返す
② 背景には不安や混乱があると理解する
③ 時間的な理由で“今ではない”とやさしく伝える
④ 好きな話題・安心できる空間に誘導する
⑤ 非言語コミュニケーションで安心を届ける
⑥ 夕方の帰宅願望には生活リズムの調整も有効

“帰りたい”という気持ちの奥にある不安を受け止め、安心を重ねていくことで、
利用者さんは徐々に落ち着きを取り戻しやすくなります。

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