2026年度の介護報酬改定を前に、政府・厚生労働省が「期中改定(臨時の報酬見直し)」の検討を進めています。
これは通常3年ごとに行われる報酬改定の間に、特別な見直しを行うというもので、介護現場では大きな注目を集めています。
この記事では、その背景と、介護スタッフの働き方・待遇にどのような影響があるのかをわかりやすく解説します。
報酬改定議論が加速している背景
2024年度改定の検証と「期中対応」議論の浮上
2024年度の介護報酬改定では、処遇改善や加算の一本化が行われました。
しかし、現場では「思ったほど賃上げにつながっていない」、「負担だけが増えた」という声が相次いでいます。
こうした現状を受け、厚労省は社会保障審議会・介護給付費分科会で、「2026年度を待たずに期中見直しを行う必要性」を示唆しました。
物価上昇・人手不足・離職率の上昇など、現場環境の変化があまりに速いため、早期対応が求められているのです。
なぜ「期中改定」がスタッフに直結するのか
期中改定の焦点は、「処遇改善」つまり給与・待遇への直接的な影響です。
仮に改定が実現すれば、介護職員の基本給アップや加算単価の見直しにつながる可能性があります。
また、LIFEデータ活用や生産性向上加算の再評価も検討対象となっており、「評価される働き方」がこれまで以上に重視される見通しです。
介護スタッフにとって“改定”が意味するもの
賃上げへの期待と現場の実感のギャップ
2024年度改定時に発表された賃上げ目標は「平均月額6,000円アップ」でしたが、実際には達成率が50%を下回る地域もあります。
理由として、事業所ごとの加算取得状況や財源配分の違いが挙げられます。
現場スタッフの間では、「制度は変わっても、自分の給与は変わらない」という声が依然として多いのが現実です。
改定が遅れた場合に起こる現場リスク
期中改定が見送られた場合、少なくとも次の改定は2026年度となり、約1年半以上の空白期間が生じます。
その間、物価上昇や燃料費高騰による運営コスト増、人手不足のさらなる悪化が予想され、スタッフの負担と離職リスクが高まる可能性があります。
特に、夜勤や訪問など身体的負担が大きい職種ほど影響が大きいとされています。
スタッフとして今からできる準備とチェックポイント
所属施設・事業所の「加算取得状況」を確認
期中改定の恩恵を受けるには、事業所が適切な加算を取得しているかが重要です。
処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ加算など、加算の仕組みを理解しておくことで、給与反映の仕組みを把握できます。
また、管理者に「うちの加算はどうなっているのか?」と聞くだけでも、自分の待遇改善への意識を示すことができます。
“評価される働き方”へのシフトを意識
今後の改定では、LIFE(科学的介護情報システム)へのデータ提出や、職員研修・チームケア体制が加算要件としてさらに重視される見通しです。
つまり、日々の記録・報告・連携がしっかりできるスタッフほど、職場にとって“必要不可欠な存在”となります。
「忙しいから記録はあとで」ではなく、“根拠に基づいたケア”を意識することが、自分の評価を高める第一歩です。
まとめ:制度の変化を「待つ側」から「動く側」へ
期中改定の議論は、介護現場の現状が限界に近いことを国が認めた証でもあります。
ただし、改定が実現しても、それが現場に届くまでには時間がかかります。
だからこそ今、スタッフ一人ひとりが制度の動きを把握し、「自分の働き方を見直す準備」を始めることが大切です。
制度に振り回されるのではなく、“変化を味方につける”姿勢が、これからの介護職に求められています。

飲食・WEB・デザイン・出版など、様々な業界を経てきた現役のケアワーカー。介護にたどり着いたのは、大好きだった祖母の自宅介護がきっかけ。ケアチルでは、現場での視点も交えつつ、これから介護業界に携わろうとしている方、すでに業界にいて岐路に立っている方に向けて、介護業界の情報を分かりやすくお届けします。