重度訪問介護では、夜間の支援を必要とする利用者も多く、夜勤業務は欠かせない仕事の一つです。
夜間は利用者が眠っている時間帯ではありますが、呼吸器の確認や体位変換、緊急時対応など、責任の重い支援が続きます。
この記事では、重度訪問介護における夜勤の仕事内容・注意点・体調管理のコツについて詳しく解説します。
重度訪問介護の夜勤とは?
重度訪問介護の夜勤とは、利用者の自宅に泊まり込み、夜間を通して支援・見守りを行う勤務形態です。
時間帯は事業所や利用者によって異なりますが、一般的には22:00〜翌7:00の9時間勤務が多く見られます。
夜勤は、介護施設の「巡回型」と異なり、一対一の“滞在型支援”であるのが特徴です。
そのため、利用者の状態を把握しながら、静かで落ち着いた環境の中で支援を行います。
夜勤の主な仕事内容
夜間帯の重度訪問介護では、主に以下のような支援を行います。
- 就寝前の介助: 体位変換・衣服の調整・吸引など
- 夜間の見守り: 呼吸・体動・寝返りの確認
- 定期的な体位変換: 褥瘡(じょくそう)防止のため、2〜3時間ごとに体位を変える
- 排泄介助: トイレ介助・オムツ交換
- 呼吸器・医療機器の確認: 異常音や接続トラブルへの対応
- 早朝の起床介助: 洗顔・整容・着替え・朝食準備
利用者によっては夜間の吸引や経管栄養が必要なケースもあり、医療的ケアの理解も求められます。
常に“緊急対応を想定する意識”が重要です。
夜勤の1日の流れ(例)
ここでは、重度訪問介護の夜勤シフトの一例を紹介します。
| 時間帯 | 主な仕事内容 |
|---|---|
| 21:30〜22:00 | 引き継ぎ・利用者の体調確認 |
| 22:00〜23:30 | 就寝介助・吸引・体位変換 |
| 23:30〜02:00 | 見守り・呼吸チェック・記録入力 |
| 02:00〜04:00 | 体位変換・オムツ交換・小休憩 |
| 04:00〜06:00 | 安否確認・見守り・緊急対応 |
| 06:00〜07:30 | 起床介助・清拭・朝食介助・引き継ぎ |
利用者によって支援内容は異なりますが、夜間中は完全な休憩時間を取れないこともあります。
そのため、勤務前後の体調管理が非常に重要になります。
夜勤で注意すべきポイント
① 眠気・集中力の低下
夜勤では、眠気による注意力の低下が最大のリスクです。
呼吸器の異常音や利用者の体調変化を見逃さないためにも、次の工夫をしましょう。
- 勤務前に十分な仮眠を取る
- カフェインの摂取は序盤に限定する(後半に飲むと睡眠リズムが乱れる)
- こまめに体を動かす・深呼吸をする
② 緊急時の対応準備
夜間は医療従事者や家族が不在のことも多いため、緊急時対応の知識が不可欠です。
- 吸引器・酸素機器の動作確認を勤務前に実施
- 緊急連絡先(家族・看護師・管理者)をメモで常備
- 万一の呼吸停止時に備えたマニュアルを確認
初勤務の前には、事前オリエンテーションで「利用者の特徴と対応手順」をしっかり確認しておきましょう。
③ 照明と音への配慮
利用者が安眠できるよう、夜間の照明や音にも細心の注意を払います。
- ライトはできるだけ間接照明・懐中電灯で対応
- ドアの開閉・介助時の物音を最小限に
- 声かけは優しく小さな声で行う
こうした細やかな配慮が、利用者の安心感につながります。
④ 自身の体調管理
夜勤は生活リズムを崩しやすく、疲労蓄積や睡眠障害を引き起こすことがあります。
次のようなセルフケアを習慣化しましょう。
- 夜勤前日は早めに就寝し、仮眠を取る
- 夜勤明けは短時間の睡眠にとどめ、日中活動でリズムを戻す
- 栄養バランスの良い食事・水分補給を心がける
- 勤務後の入浴・ストレッチでリラックスする
「夜勤の疲れを次の勤務に持ち越さない」ことが長く働くコツです。
夜勤で求められるスキルと心構え
夜勤では一人で判断する場面が多く、冷静さと観察力が求められます。
また、静かな時間帯だからこそ、利用者の小さな変化に気づける力が重要です。
求められるスキル例
- 呼吸・表情・体温変化を察知する観察力
- 医療的ケア(吸引・経管栄養)の理解
- 緊急対応・報告連絡の判断力
- 長時間勤務に耐えられる体力と集中力
また、利用者の安眠を守りながら、常に「もしも」に備える姿勢が求められます。
まさに夜勤ヘルパーは、利用者の命を預かる“最後の砦”といえる存在です。
夜勤のメリットとやりがい
夜勤は大変な仕事ですが、同時に多くのメリットもあります。
- 夜勤手当が高く、収入が安定する
- 一対一でじっくり利用者と関われる
- 緊張感のある現場でスキルが磨かれる
- 利用者や家族からの信頼を得やすい
実際、夜勤を中心に働くベテラン職員も多く、
「利用者の命を見守る誇りを感じる」という声が数多く聞かれます。
夜勤の報酬目安
夜勤は手当が充実しており、収入面でも魅力があります。
| 勤務形態 | 1勤務あたりの報酬 | 備考 |
|---|---|---|
| 登録ヘルパー(夜勤) | 2万〜3万円前後 | 実働8〜12時間 |
| 正社員 | 月給25〜30万円+夜勤手当 | 夜勤4〜6回/月 |
| パート・契約社員 | 時給1,500〜2,000円+深夜割増 | 短時間勤務も可 |
夜勤回数を調整することで、家庭との両立もしやすい働き方が可能です。
まとめ:夜勤は「命を預かる責任」と「確かなやりがい」
重度訪問介護の夜勤は、静かな時間の中に多くの責任と緊張が伴う仕事です。
しかしその分、利用者の安全と安心を守るという大きな使命を担っています。
「夜勤があるからこそ、在宅生活が続けられる」――
その言葉を胸に、介護職員たちは夜を見守り続けています。
自分のペースで働きながら、誰かの“生きる力”を支えるやりがいを、夜勤の現場で感じてみませんか。
続けて読むならこちらの記事

飲食・WEB・デザイン・出版など、様々な業界を経てきた現役のケアワーカー。介護にたどり着いたのは、大好きだった祖母の自宅介護がきっかけ。ケアチルでは、現場での視点も交えつつ、これから介護業界に携わろうとしている方、すでに業界にいて岐路に立っている方に向けて、介護業界の情報を分かりやすくお届けします。
