重い障がいを抱える人の在宅生活を支える重度訪問介護員。
利用者一人ひとりに寄り添いながら“その人らしい生活”を支える仕事として、近年注目が高まっています。
この記事では、重度訪問介護員になるための資格・研修内容・就職の流れ・働く環境について、初心者にもわかりやすく解説します。
重度訪問介護員とは？
重度訪問介護員とは、重度の身体障がいや知的・精神障がいを持つ方に対して、日常生活全般の支援を行う介護職です。
通常の訪問介護と異なり、長時間・夜間・外出支援・見守りなどを含む包括的な支援を行うのが特徴です。
対象となる利用者は、ALSや筋ジストロフィー、脊髄損傷などで常時介助が必要な方。
自宅で安心して暮らせるよう、身体介助に加え、意思疎通のサポートや緊急時対応も担います。
重度訪問介護員になるために必要な資格
重度訪問介護員として働くには、以下のいずれかの資格・研修を修了している必要があります。
| 資格・研修名 | 主な特徴 | 受講期間の目安 |
|---|---|---|
| 重度訪問介護従業者養成研修 | 未経験でも受講可能。重度障がい者への支援に特化した内容。 | 約50〜60時間（5〜7日間） |
| 介護職員初任者研修 | 介護全般の基礎を学ぶ。修了すれば重度訪問介護にも従事可。 | 約130時間（1〜2か月） |
| 実務者研修・介護福祉士 | より高度な知識と技術を習得。医療的ケアにも対応可。 | 実務者研修：約450時間 |
未経験者に最も人気が高いのが「重度訪問介護従業者養成研修」です。
この研修を修了すれば、すぐに現場で働くことができます。
重度訪問介護従業者養成研修の内容
重度訪問介護研修では、一般的な介助だけでなく、医療的ケア・意思疎通支援・リスク管理など、
より専門性の高い内容を学びます。
主なカリキュラム
- 障がい福祉制度の基礎知識
- 障がい特性（ALS・脊髄損傷・筋疾患など）の理解
- 移乗・排泄・入浴などの身体介護技術
- 吸引・経管栄養など医療的ケアの基礎
- 利用者とのコミュニケーション方法
- 緊急時対応・感染症対策
講義と実技演習の両方を行い、修了後には認定証が交付されます。
多くのスクールでは、夜間・土日コースも用意されており、働きながら取得可能です。
資格取得までの流れ
重度訪問介護員になるための一般的なステップは次の通りです。
- ① 研修スクールを選ぶ
地域の福祉人材センターや民間介護スクールを確認。
受講料は5万〜8万円程度が相場です。 - ② 研修受講・修了
学科と実技を修了し、修了証明書を取得。 - ③ 求人応募・面接
訪問介護事業所・障がい福祉事業所などに応募。 - ④ 就業開始・現場研修
現場でOJT（同行支援）を受けながら実践を積む。
未経験者でも、研修修了から1か月以内に現場デビューするケースが多く、
福祉業界では比較的早く就職できる資格のひとつです。
就職先・働く場所
重度訪問介護員の主な勤務先は以下の通りです。
- 重度訪問介護事業所
- 障がい者福祉サービス事業所
- 居宅介護・同行援護事業所
- 医療的ケアを行う訪問介護ステーション
勤務形態は直行直帰型が多く、利用者の自宅へ直接訪問して支援します。
また、夜勤や長時間シフトがあるのも特徴です。
重度訪問介護員の1日のスケジュール例
重度訪問介護員は、利用者の生活リズムに合わせた柔軟な働き方をします。
| 時間帯 | 仕事内容 |
|---|---|
| 08:00〜10:00 | 起床介助・食事介助・整容支援 |
| 10:00〜13:00 | 洗濯・掃除・通院付き添い |
| 13:00〜17:00 | 会話・見守り・体位変換・外出支援 |
| 17:00〜21:00 | 夕食介助・就寝準備 |
1日1件の長時間支援が多いため、勤務中は利用者と密に関わり、深い信頼関係を築くことができます。
給与・待遇の目安
重度訪問介護員の給与は、勤務時間・地域・経験によって異なります。
| 雇用形態 | 給与の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 正社員 | 月給22〜28万円 | 夜勤手当・資格手当あり |
| パート | 時給1,200〜1,800円 | 経験・時間帯で変動 |
| 登録ヘルパー | 1勤務（夜勤）2万〜3万円 | 自由シフト制 |
特に夜勤手当が高く、安定収入を得やすい職種です。
処遇改善加算により、年2〜3回の賞与が支給される事業所も増えています。
重度訪問介護員に向いている人
この仕事は「人の命を支える現場」であるため、責任感と冷静な対応力が求められます。
次のような人が向いている傾向があります。
- 人のために働くことにやりがいを感じる
- 丁寧で落ち着いた対応ができる
- 一対一の関わりが好き
- 夜勤・長時間勤務にも柔軟に対応できる
- 相手の立場を思いやることができる
また、利用者の“生き方”を尊重できる姿勢が何より大切です。
資格取得後のキャリアパス
重度訪問介護員として経験を積むことで、次のようなキャリアアップが可能です。
- サービス提供責任者： スタッフ管理・計画作成を担うリーダー職
- 管理者： 事業所全体の運営・行政対応を行う
- 相談支援専門員： 利用計画を立てるコーディネーター
- 介護福祉士： 国家資格としてさらなる専門性を獲得
資格をステップアップさせることで、給与・待遇・責任範囲も広がります。
特に介護福祉士の資格を取得すると、医療的ケアを伴う支援やリーダー業務にも携われます。
まとめ：誰かの「生きる力」を支える仕事
重度訪問介護員は、利用者の生活そのものを支える存在です。
身体介助だけでなく、孤独や不安を和らげる心の支援も大きな役割。
資格を取得すれば未経験からでも挑戦でき、長く続けられる専門職です。
「誰かの人生を支える仕事がしたい」と思う人にとって、
重度訪問介護は、確かなやりがいと成長を感じられる職業です。
あなたの一歩が、誰かの“自分らしい生活”を支える力になります。
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飲食・WEB・デザイン・出版など、様々な業界を経てきた現役のケアワーカー。介護にたどり着いたのは、大好きだった祖母の自宅介護がきっかけ。ケアチルでは、現場での視点も交えつつ、これから介護業界に携わろうとしている方、すでに業界にいて岐路に立っている方に向けて、介護業界の情報を分かりやすくお届けします。
