
重度の障がいを持つ方の在宅生活を支える重度訪問介護。
事業運営を行ううえで欠かせないのが、報酬単価や加算の正しい理解です。
この記事では、2024年度報酬改定にも対応した重度訪問介護の報酬単価・加算・時間区分別単価をわかりやすく整理し、今後の運営のポイントを解説します。
重度訪問介護の報酬体系とは
重度訪問介護の報酬は、「1時間あたりの単価」をもとに算定されます。
時間帯・支援内容・体制によって報酬が異なり、次の3つが基本的な区分です。
- 通常の重度訪問介護(1人対応)
- 二人体制支援(重介護者対応)
- 夜間・深夜・早朝などの時間加算
また、処遇改善加算などの各種加算を組み合わせることで、実際の請求金額が決まります。
重度訪問介護の基本報酬単価(2024年度改定後)
以下は、2024年度報酬改定後の全国平均的な基本報酬単価の目安です。
※地域加算・個別条件により変動あり。
時間区分 | 支援時間 | 基本報酬(1回あたり) |
---|---|---|
区分1 | 30分以上1時間未満 | 約1,000円〜1,100円 |
区分2 | 1時間以上2時間未満 | 約1,950円〜2,050円 |
区分3 | 2時間以上3時間未満 | 約2,900円〜3,000円 |
区分4 | 3時間以上 | 1時間あたり約1,000円〜1,050円加算 |
区分5 | 夜間(22時〜6時) | 基本報酬の25%加算 |
区分6 | 深夜(0時〜4時) | 基本報酬の50%加算 |
報酬は「時間数×単価」で算出され、夜間・深夜・休日の勤務には加算が上乗せされます。
二人体制・医療的ケア対応時の加算
重介護の利用者や医療的ケアを必要とする場合は、以下のような加算が適用されます。
加算項目 | 内容 | 加算率・金額 |
---|---|---|
二人体制加算 | 移乗・排泄などに二人の介護職員が必要な場合 | 基本報酬の50%加算 |
医療的ケア対応加算 | 喀痰吸引・経管栄養など医療行為を伴う場合 | 1回あたり200〜400円 |
長時間加算 | 8時間以上の連続支援を行った場合 | 基本報酬の10%加算 |
特定事業所加算 | 質の高いサービス提供体制を整えた事業所 | 月額5〜10%相当の加算 |
特に二人体制加算は重度訪問介護で頻度が高く、報酬への影響も大きい項目です。
処遇改善加算の適用
重度訪問介護でも、他の介護サービスと同様に介護職員処遇改善加算を算定できます。
事業所の体制によって加算率が異なり、職員の給与アップに直結します。
加算区分 | 概要 | 加算率 |
---|---|---|
処遇改善加算Ⅰ | 職員のキャリアアップ体制・研修制度を整備している | 約13.7% |
処遇改善加算Ⅱ〜Ⅲ | 体制・賃金改善の条件を一部満たしている | 約5〜10% |
特定処遇改善加算 | 経験・技能のある職員に重点配分 | 約6% |
加算を取得することで、職員への還元を進めつつ、離職防止・採用強化にもつながります。
2024年度報酬改定のポイント
2024年度(令和6年度)の障がい福祉サービス報酬改定では、
「人材確保」「サービスの質向上」「ICT化推進」を目的とした改定が行われました。
主な変更点
- 介護職員等処遇改善加算の一本化
- ICT・記録システム導入による加算(ICT導入加算)の新設
- 二人体制支援の報酬引き上げ
- 長時間支援の単価見直し
これにより、事業所の経営安定化と職員の待遇改善が進みやすくなりました。
請求・算定時の注意点
重度訪問介護の報酬請求では、サービス記録と勤務実績の整合性が重要です。
以下の点を徹底しておくことで、返戻や加算漏れを防げます。
- サービス提供記録の時間・内容を正確に記載
- 夜間・二人体制の加算要件を証明する記録を保存
- 資格要件を満たす職員のみ算定対象にする
- 報酬改定情報を常に最新に保つ
特に新設されたICT関連加算や処遇改善一本化は、自治体によって運用が異なる場合があるため、
地域の障がい福祉課へ確認することが大切です。
報酬モデル試算例
以下は、1日8時間・1人体制で重度訪問介護を提供した場合の試算例です。
内容 | 算定単価 | 備考 |
---|---|---|
基本報酬(8時間) | 約8,000円 | 1時間1,000円換算 |
夜間加算(25%) | +2,000円 | 22:00〜6:00勤務時 |
処遇改善加算(13.7%) | +1,370円 | 加算Ⅰ適用時 |
合計 | 約11,370円/日 | ※概算。地域差あり。 |
このように、加算を組み合わせることで報酬が約1.3〜1.5倍に増えるケースもあります。
まとめ:正しい報酬理解が事業継続のカギ
重度訪問介護は、夜間・長時間・医療的ケアなどの専門性が高い分、
報酬体系も複雑です。しかし、各加算を正しく理解し、要件を満たすことで安定した収益構造を築けます。
2024年度改定では、職員処遇やICT活用がより重視されるようになりました。
制度の動向を常に把握し、「質の高いサービス」×「適正な算定」の両立を目指すことが、これからの事業経営の要です。
報酬制度を味方につけ、重度障がい者の在宅生活を支える強いチームをつくっていきましょう。

飲食・WEB・デザイン・出版など、様々な業界を経てきた現役のケアワーカー。介護にたどり着いたのは、大好きだった祖母の自宅介護がきっかけ。ケアチルでは、現場での視点も交えつつ、これから介護業界に携わろうとしている方、すでに業界にいて岐路に立っている方に向けて、介護業界の情報を分かりやすくお届けします。