
介護職のキャリアアップ資格として注目されている「介護福祉士実務者研修」。
介護職員初任者研修の次のステップとして位置づけられ、介護福祉士国家試験の受験資格にもなる重要な研修です。
しかし、「本当に取る価値があるの?」「仕事をしながら通えるの?」と不安を感じる方も多いでしょう。
この記事では、実務者研修を受講するメリットとデメリットを具体的に解説し、受講を検討する際の判断材料を紹介します。
実務者研修とは?
実務者研修は、介護職の専門性を高めるための中級レベルの資格です。
「初任者研修」で学ぶ介護の基礎に加えて、より専門的な知識や医療的ケア(喀痰吸引・経管栄養など)を学びます。
また、介護福祉士国家試験の受験資格としても必須になっており、介護職として長く働くうえで避けて通れないステップといえます。
項目 | 概要 |
---|---|
対象者 | 介護職員(無資格・初任者研修修了者) |
学習内容 | 介護過程・医療的ケア・介護計画作成・指導法など |
受講期間 | 約6か月(通信+スクーリング) |
費用 | 約12万〜20万円(スクールにより異なる) |
実務者研修を受けるメリット
① 介護福祉士国家試験の受験資格が得られる
最も大きなメリットは、介護福祉士国家試験の受験資格を得られることです。
2017年度以降、国家試験を受けるためには「実務経験3年以上+実務者研修修了」が必須条件となりました。
つまり、今後介護業界でキャリアを積むなら、実務者研修は通過点ではなく必修ルートです。
② サービス提供責任者として働ける
訪問介護事業所では、サービス提供責任者(サ責)の配置が義務づけられています。
実務者研修を修了すれば、介護福祉士資格がなくてもサ責として勤務できる条件を満たせます。
サ責は管理職への登竜門でもあり、給与面でも月2〜3万円の昇給につながるケースもあります。
③ 医療的ケアを学べる
実務者研修では、喀痰吸引や経管栄養などの医療的ケアの基礎を学びます。
これにより、医療と介護の連携現場でスムーズに対応できるようになります。
特に高齢化が進む中、医療的ケアに対応できる介護職は現場で重宝されやすい存在です。
④ 利用者支援の幅が広がる
初任者研修ではできない業務(医療的ケア・ケアプラン補助など)が可能になり、
より高度な介護技術を持つ即戦力人材として評価されます。
実務者研修を受講することで、介護現場での信頼性・自信・やりがいが格段に向上します。
⑤ 働きながらでも取得しやすい
通信制で学べるスクールが多く、仕事と両立しながら受講できるのも大きなメリットです。
在宅学習を中心に、数回のスクーリング(通学)で修了可能なため、育児中・フルタイム勤務の方でも無理なく通えます。
実務者研修のデメリット
① 費用が高い(平均15万円前後)
初任者研修(約8〜10万円)に比べると、実務者研修は費用負担がやや重いのが現実です。
ただし、介護事業所によっては「資格取得支援制度」や「受講料補助」があり、実質負担を減らせる場合もあります。
また、教育訓練給付制度を利用すれば最大20%(上限10万円)の返還を受けられます。
② 勉強量が多く、時間がかかる
学習範囲は初任者研修の2倍以上。通信課題・レポート・スクーリングなど、
一定の時間を確保しないと修了できません。
働きながら受講する場合は、週5〜10時間程度の学習時間を取ることが理想です。
③ 仕事との両立が大変
スクーリングの日程は固定されていることが多く、勤務調整が必要になることもあります。
特に介護現場でシフト制勤務をしている方は、上司や同僚の協力が不可欠です。
また、提出期限や実技試験が近づくと、仕事との両立にプレッシャーを感じる人もいます。
④ 取得後すぐに給与が上がるとは限らない
実務者研修を修了しても、資格手当がすぐ反映されるとは限りません。
法人によっては、介護福祉士資格取得やサ責登用を前提に昇給する場合もあります。
ただし、長期的には評価されやすく、将来的な昇給・キャリアアップの基礎になります。
実務者研修はどんな人におすすめ?
- 介護職としてキャリアを積みたい人:将来は介護福祉士・サ責・管理職を目指したい方。
- 介護の専門知識を深めたい人:医療的ケアや利用者理解を体系的に学びたい方。
- 安定した職に就きたい人:介護業界で長く働くための資格を取得したい方。
- 収入アップを目指す人:資格手当や昇進に直結するスキルを得たい方。
特に「これから本格的に介護職を続けたい」「現場で頼られる存在になりたい」という人には、非常に価値のある資格です。
実務者研修を受講する前に知っておくポイント
- 通信制・通学制どちらを選ぶかを確認する
- 職場の資格支援制度を活用できるか調べる
- 受講開始から修了までのスケジュールを把握する
- 教育訓練給付制度が利用できるスクールを選ぶ
事前に準備しておくことで、仕事や生活との両立がスムーズになり、修了率を高めることができます。
まとめ:実務者研修は「将来を見据えた投資」
実務者研修には、費用や学習時間といった負担もありますが、それ以上に大きなメリットがあります。
介護福祉士への道が開けるだけでなく、サ責登用や給与アップなど、将来の安定につながる資格です。
長く介護業界で働き続けたい方にとって、実務者研修は「キャリアと収入を両立できる最重要ステップ」といえるでしょう。
無理のない計画を立てて、ぜひ次のステージへ進んでみてください。

飲食・WEB・デザイン・出版など、様々な業界を経てきた現役のケアワーカー。介護にたどり着いたのは、大好きだった祖母の自宅介護がきっかけ。ケアチルでは、現場での視点も交えつつ、これから介護業界に携わろうとしている方、すでに業界にいて岐路に立っている方に向けて、介護業界の情報を分かりやすくお届けします。