妄想や被害感が強い時の接し方は?|不安を受け止め、安心を取り戻すための関わり方

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介護の現場では、「財布を盗まれた」「誰かに見張られている」「ご飯に何か入れられた」などの妄想・被害的な訴えに出会うことがあります。
特に認知症のある方は、記憶の混乱や環境への違和感が重なることで、被害感が急に強まることも珍しくありません。

この状況に対して、つい「そんなことありませんよ」「勘違いですよ」と事実で否定したくなりますが、否定は不安や怒りをさらに増幅させてしまい、訴えが強まる原因にもなります。

妄想や被害感は、現実と異なるように見えても、本人にとってはその瞬間の“真実”であり、強い恐怖や混乱の表れです。
ここでは、そうした状況に安心で寄り添うための“実践的な接し方”を詳しく解説します。

① 被害的な訴えの背景には“不安・混乱・孤独感”が隠れている

妄想や被害感の裏側には、必ず何らかの「不安」が存在します。
それは身体の不調かもしれないし、眠気や疲労かもしれませんし、環境への違和感かもしれません。

よくある背景:

  • 不安感:誰かに頼りたい、守ってほしいという気持ち
  • 記憶の混乱:物が見つからず「誰かが取った」と感じてしまう
  • 見当識障害:場所・時間・状況の理解ができず不安につながる
  • 孤独感・寂しさ:自分を気にかけてほしい気持ち
  • 体調悪化:痛み・脱水・眠気が混乱を引き起こす
  • 環境要因:騒音・照明・温度の違和感

つまり、妄想や被害感は本人なりの「SOS」であり、気持ちを理解しようとする視点がとても大切です。

② 否定より“気持ちの受け止め”が効果的

被害的な内容をそのまま否定すると、本人は「理解してもらえない」という強い思いを抱き、さらに興奮や不信感が強まります。

そのため、最初の対応は、

● 内容ではなく “気持ち” を受け止めること

が基本です。

声かけの例:

  • 「そう感じておられるんですね」
  • 「怖い思いをされましたね」
  • 「心配になってしまいますよね」
  • 「まずはここで一緒に落ち着きましょう」

これにより、本人が抱えている「不安」に寄り添うことができ、心が少しずつ落ち着きます。

否定しない=妄想を肯定する、という意味ではありません。
あくまで本人の気持ちだけを受け止めるのが介助者の役割です。

③ 事実確認は“後”でいい。まずは安心してもらう対応を

被害的な訴えでは、内容を正すことに意識が向きがちですが、
本人が興奮している間に事実を説明しても意味がありません。

まずは落ち着ける環境を作り、安心と安全を先に届けます。

対応のステップ:

  1. 気持ちを受け止める声かけをする
  2. 安心できる空間へ誘導する(静かな部屋・いつもの席など)
  3. ゆっくりとした声で話す
  4. 落ち着いてから軽く説明をする

説明は「否定」ではなく、安心につながる形で短く伝えることがポイントです。

  • 「確認しましたが、大丈夫でしたよ」
  • 「ここに置いてありますよ。一緒に見ましょうか」

④ 非言語の安心がとても効果的:視線・声のトーン・タッチ

被害感が強いとき、利用者さんは周囲を警戒していたり、過敏になっていることがあります。
そのため、安心を届けるには非言語のアプローチが有効です。

安心を伝える工夫:

  • ゆっくり目線を合わせる
  • 声は低めで穏やかに話す
  • 手をゆっくり差し出し、触れられる場合はそっと手を握る
  • 急な動きを避ける(ゆっくり動く)
  • 距離をとる(圧迫感を与えない)

特に認知症の方は、言葉より「表情・雰囲気・声」を敏感に読み取ります。
安心を伝える“空気感”を整えることがとても重要です。

⑤ 落ち着かない状況が続く時は“環境調整”も必須

妄想・被害感は、環境に影響を受けやすいという特徴があります。

環境調整のポイント:

  • 部屋の明るさを適切にする(暗すぎると不安が増す)
  • 騒音の少ない場所で過ごしてもらう
  • 寒すぎ・暑すぎを避ける
  • 好きな音楽を流す・落ち着く匂いを使う

些細な環境の違いが安心感に直結することは珍しくありません。

⑥ チームでの共有が妄想・被害感を安定させるカギ

被害的な訴えは、対応が職員によってバラつくと、本人の混乱が強まり、訴えが固定化・悪化することがあります。

そのため、

● どのように返すか
● どう環境を整えるか
● 誰が関わると落ち着きやすいか

をチームで共有しておくことが重要です。

統一した関わりが安心を生み、妄想の強さをやわらげる効果があります。

まとめ:妄想や被害感は“不安の声”。否定せず、気持ちに寄り添うことが最優先

妄想や被害感は、本人の内部で起きている不安や混乱から生まれる自然な反応です。
この状況で必要なのは、事実の説明ではなく寄り添う姿勢と安心を届ける関わりです。

① 被害的な訴えの背景には不安や混乱がある
② 否定せず“気持ちの受け止め”から始める
③ 事実説明よりもまず安心を届ける
④ 非言語コミュニケーションを活用する
⑤ 環境調整で不安をやわらげる
⑥ チームで統一した対応を取る

これらを意識することで、利用者さんは安心を感じやすくなり、妄想や被害感が落ち着いていくケースが多くあります。
“安心を届けるケア”を意識しながら、安全で穏やかな環境を一緒につくっていきましょう。

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