同じ質問を何度もされる…どう返す?|不安を和らげる返答と安心を届けるコミュニケーション

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介護の現場で「同じ質問を何度もされる」という状況は珍しくありません。
「ご飯はまだ?」「今日はどこに行くの?」「トイレはどこ?」など、短時間に何度も繰り返されるケースもあります。
新人スタッフほど戸惑いやストレスを感じやすく、「どう返したらいいの?」「もっと良い方法はない?」と悩むことが多いでしょう。

しかし、この行動には本人なりの理由や背景が存在します。
ただ忘れているだけではなく、不安や孤独、環境への違和感、時間感覚の混乱など、さまざまな要因が行動に影響しています。

この記事では、同じ質問を繰り返されるときの基本的な返し方から、安心を伝えるコミュニケーション、質問が増える背景の理解まで、現場で使える“実践的な対応ポイント”を詳しく解説します。

① 否定や注意をせず、短い答えを繰り返すのが基本

質問が続くと、「さっき答えたばかりなのに…」と思ってしまいがちですが、
「言ったはずですよ」「何度も聞かないで」と返すと、利用者さんの不安がさらに強くなり、質問が増える悪循環につながります。

最も大切なのは、

● 否定せず、安心につながる短い返答を繰り返すこと

返答の例:

  • 「大丈夫ですよ、ここにいますからね」
  • 「もう少ししたらご飯になりますよ」
  • 「心配しなくて大丈夫ですよ」
  • 「後で一緒に確認しましょうね」

短く優しい返答を繰り返すことで、利用者さんの不安がゆっくりと落ち着いていきます。
これは認知症の方だけでなく、不安の強い方にも非常に効果的な対応です。

② 繰り返し質問の背景には“気持ち”が隠れている

同じ質問が続くとき、表面の言葉だけで判断せず、背景にある感情や状態に目を向けることが大切です。

よくある背景:

  • 不安感:安心したい気持ちが言葉になっている
  • 記憶の混乱:質問したこと自体を忘れている
  • 見当識の低下:時間や場所が分からず不安が増す
  • 体調不良:違和感があり落ち着かない
  • 寂しさ:誰かとつながっていたい気持ち
  • 生活リズムの乱れ:夜間不眠、昼夜逆転など

特に認知症高齢者の場合、質問は「確認したい」より「安心したい」意味合いが強いことがあります。
そのため、返すべきなのは“正しい情報”よりも、安心できる言葉なのです。

③ 視線やタッチで安心を伝えると質問が落ち着きやすい

言葉だけで返しても、利用者さんの不安が強い場合はなかなか落ち着きません。
そこで大切なのが、非言語での安心の伝え方です。

不安をやわらげる非言語コミュニケーション:

  • 視線を合わせる(優しくゆっくり)
  • うなずきながら話を聞く
  • 手をそっと添えたり、肩に触れる
  • 落ち着いたトーンでゆっくり話す
  • 顔の高さを合わせて寄り添う姿勢になる

これらはすべて「あなたの不安に寄り添っていますよ」というメッセージになります。
認知症の方は、言葉よりも“雰囲気”や“空気感”で相手を判断するため、非言語の安心はとても効果的です。

④ 質問に困ったときは、そっと話題をそらすのも有効

短時間で何度も同じ質問が続く場合、返し方を変える必要があります。
否定せずに、自然に別の方向に意識を向けてもらう方法です。

話題転換の例:

  • 「心配ですよね。でも大丈夫ですよ。お茶でも飲みましょうか?」
  • 「その話、あとで一緒に確認しますね。今は少し休みましょうか」
  • 「そうなんですね。ところで今日はとても天気がいいですよ」

「話題をそらす」は冷たい対応ではありません。
むしろ、本人の不安から意識を離すための立派な支援です。

⑤ 突然質問が増えたときは“体調や環境”にも注意する

質問の回数が急に増える場合、以下のような要因が隠れていることがあります。

  • 部屋が寒い・暑い
  • トイレを我慢している
  • 痛み(腰痛・頭痛など)
  • 便秘・尿意・違和感
  • 眠れていない
  • 人の出入りが多く落ち着かない

質問を繰り返すのは、本人なりの“SOS”である可能性もあります。
観察力を高め、原因に気づくことで対応が大きく変わります。

⑥ 返答方針をスタッフで統一すると利用者さんが落ち着く

複数スタッフが働く環境では、返答の仕方がバラバラだと、利用者さんが混乱して質問が増えることがあります。

例えば、

  • Aさん:しっかり説明する
  • Bさん:簡潔に返す
  • Cさん:話題を変えようとする

このようなズレは不安を増幅させるため、
「基本的には短い返答で安心を伝える」といった、返答の方針をチームで共有しておくことが大切です。

まとめ:繰り返し質問は“不安のサイン”。安心を届ける関わりを

同じ質問を何度もする行動は、本人の「困りごと」や「不安」が現れた大切なサインです。

① 否定せず、短い返答を繰り返す
② 質問の背景にある不安や混乱に目を向ける
③ 視線やタッチで安心を伝える
④ やさしく話題をそらす方法も有効
⑤ 環境・体調の違和感に気づく
⑥ 返答方針をチームで統一する

同じ質問を繰り返す利用者さんは、何度も確認することで安心しようとしています。
“答える”のではなく、“安心を届ける”意識で関わることで、利用者さんの落ちつきが大きく変わります。

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