利用者同士のトラブルが増えている?声かけ・席順・距離感で変わる関係づくりのコツ

※当サイトにはPR広告が含まれております。

介護現場では、転倒や誤薬などの「事故」だけでなく、利用者同士のちょっとしたトラブルに頭を悩ませる場面が増えています。
「席の取り合い」「私物を取られたと思い込む」「うるさい・邪魔と言い合いになる」など、一見ささいに見える出来事が、不穏・拒否・暴言・引きこもりにつながってしまうこともあります。
この記事では、現場スタッフ目線で、利用者同士のトラブルが起きやすい背景と、席順・距離感・声かけの工夫でできる予防とフォローを整理します。

なぜ今、利用者同士のトラブルが増えているのか

  • 人員不足で見守りの目が届きにくい。
  • 認知症の進行度が異なる人が同じ空間で過ごす。
  • 席順や距離感の設計が追いついていない。

スタッフの人数が限られるなか、フロア全体を細やかに見守ることが難しくなり、小さなイライラや誤解の“芽”に気づきにくくなっています。
同じ食堂・リビングに、認知症の進行度や感覚過敏の程度が違う利用者さんが混在することで、声の大きさ・話し方・動作が刺激となりやすい状況も増えています。
さらに、コロナ禍以降のレイアウト変更やパーテーション設置・撤去の影響で、席順・動線・視線の交わり方が変化し、以前とは違うストレスポイントが生まれている施設も少なくありません。

現場でよくある“利用者トラブル”のパターン

  • 席順や場所取りでぶつかる。
  • 私物に触れた・取られたと思い込む。
  • 「うるさい」「邪魔」などの言い合いになる。

「いつも自分が座っている席」に強いこだわりがある方と、特にこだわりなく席に座る方が交わると、場所取りトラブルが起きやすくなります。
また、物忘れが進んでいる方のテーブルに、別の利用者さんのコップやハンカチが紛れ込むことで、盗られた・触られたと感じてしまう場面もあります。
聴覚過敏や疲労がある方にとって、隣席の「独り言」「テレビへの相づち」「同じ話の繰り返し」がつらくなり、「うるさい」「黙っていて」と言い合いになるケースも典型的です。

よくあるシーン:
・食堂で、いつも同じ席に座りたいAさんと、「空いていたから」と座ったBさんが口論になる。
・Bさんが何気なくAさんの湯のみを動かしたことで、「それは私のだ」「盗った」と怒りがエスカレートする。
・テレビの音量+隣の独り言が重なり、イライラがたまったCさんが「うるさい!」と声を荒らげてしまう。

トラブルを減らすための“配置・声かけ”の工夫

  • 席順と距離感を意識してレイアウトする。
  • 相性の悪い組み合わせは物理的に離す。
  • スタッフが“間に座る”・“通る”動線をつくる。

まずは、「誰と誰が近いとトラブルが起きやすいか」をスタッフ間で共有し、席順やテーブル配置を見直すことが有効です。
相性の悪い利用者同士は、真正面や真横ではなく、斜め向かい・少し距離をおいた位置にするだけでも、視線や音の刺激が和らぎます。
また、トラブルが起きやすいテーブルには、スタッフが自然に行き来できる動線を作り、「間に座る」「間に立つ」ことで、緩衝材のような役割を果たすことができます。

配置の工夫例:
・“マイルーム意識”が強い方は、出入り口から少し離れた「落ち着ける定位置」を決める。
・刺激に弱い方は、人通りの多い席を避け、壁側やコーナー席に。
・会話好きで声が大きい方は、同じく会話好きの方の近くにまとめる。

スタッフの“ひと言”で変わる、火の消し方

  • どちらかを一方的に責めない。
  • 気持ちをまず受け止める。
  • 場をいったん切り替える。

小さなトラブルが起きたとき、「○○さんが悪い」「やめなさい」とどちらかを責めてしまうと、関係がこじれやすくなります。
まずは、「びっくりしましたね」「大事なお茶碗ですもんね」と、それぞれの気持ちに寄り添うひと言を挟むことで、怒りの温度を少し下げることができます。
そのうえで、飲み物を替える・席を変える・短時間別の活動に誘うなど、場面を切り替える介入を行うと、トラブルが長引きにくくなります。

対応のひと言例:
・「○○さんの大事なお席ですもんね。今日は、こちらの席をご用意しましたよ。」
・「驚かせてしまいましたね。今から新しいお茶をお持ちしますので、こちらで一緒に飲みましょうか。」
どちらかの“悪者探し”をするのではなく、気持ち+具体的な提案で場を収めていきます。

“気まずさ”を残さないアフターフォロー

  • 事実は簡潔に、感情はていねいに扱う。
  • 相手を直接批判しない説明にする。
  • 安心できるルーティンへ戻していく。

トラブルがいったん収まっても、心のモヤモヤが残っていると、翌日以降も尾を引くことがあります。
あとからフォローに入るときは、「誰が悪い」ではなく「こういうことがあって、こう対応しました」と、事実を短く伝えるにとどめます。
そのうえで、「○○さんが安心して過ごせるよう、席の場所をこちらにしました」「さっきは驚かれたと思いますが、今は落ち着いていらっしゃいますよ」といった、安心につながる情報を足していきます。

アフターフォローの声かけ例:
「さっきはびっくりしましたね。今はもう席を少し離して、お互いゆっくり過ごしてもらっています。○○さんも、ここで落ち着いてお茶にしましょうか。」

チームで共有したい“利用者同士トラブル”の見方

  • 「問題行動」と決めつけない。
  • 引き金になった環境要因を探す。
  • 次に同じことが起きない工夫を考える。

利用者同士のトラブルは、その人の性格や病気だけの問題として片づけてしまうと、対応が行き詰まりやすくなります。
「どんなときに」「どこで」「誰と」「どんな言葉・状況が引き金になったか」を振り返ることで、席順・時間帯・スタッフ配置・声かけなど、環境側の工夫が見えてきます。
カンファレンスや短時間の振り返りの中で、「次に似た場面があったら、どう配置を変えるか」「どんな声かけができるか」をチームで話しておくと、同じトラブルを“現場の学び”に変えることができます。

まとめ:小さな衝突を“安全へのヒント”に変えていく

  • 利用者同士のトラブルは、どの現場でも起こりうる。
  • 席順・距離感・スタッフの入り方で、リスクは大きく変わる。
  • 責めるより“気持ち+環境調整”で整えていく。

利用者同士のトラブルは、完全にゼロにすることは難しいかもしれません。
それでも、「どんな組み合わせ・どんな配置・どんな声かけで起きやすいか」をチームで共有していけば、小さな衝突を「次の事故を防ぐヒント」に変えていくことができます。
今日の勤務から、一つだけ席順を見直してみることトラブルのあとにひと言多くフォローすることから始めてみませんか。
その積み重ねが、利用者にとってもスタッフにとっても、心地よく過ごせるフロアづくりにつながっていきます。

🤝「人間関係・待遇・働き方」に悩んでいる方へ

「今の職場、ちょっと合わないかも…」と感じたら、まずは話をしてみませんか?介護職専門のアドバイザーが、あなたの希望や悩みを丁寧に聞き取り、ぴったりの職場や非公開求人をご紹介します。

待遇交渉や面接の調整、就業後のフォローまで、すべてのサポートが完全無料。 職場の雰囲気や人間関係など、ひとりでは分かりづらい情報も事前に確認できます。転職するかどうか迷っている段階でも大丈夫。相談を通して自分の強みや、より良い働き方のヒントが見えてくるはずです。

※ すべてのサービスを0円でご利用いただけます。ご相談内容は外部に共有されません。


関連コラム

  1. 介護職の人間関係は大変?よくある悩みと上手な付き合い方を徹底解説

  2. 訪問介護の仕事内容とは?一日の流れ・サービス内容・必要資格を徹底解説

  3. 名前を覚えきれない…どうすれば?|介護現場で役立つ“記憶のコツ”

  4. 水分摂取を嫌がる…どう促す?|“少量・習慣化・見える化”で無理なく水分補給を支えるコツ

  5. ラウンドがいつもバタバタ…どう改善する?|優先度と動線を意識した“安定した動き方”のコツ

  6. 体位変換で腰を痛めやすい…防ぐ方法は?|身体を守る「てこの原理」と姿勢づくり